バックナンバー 第121~第130回
第121回 ゲーム感覚のミステリーを読みたい人におススメ

図書館 学生アルバイト 庄司佳弘
私のオススメ
『パズル』
山田悠介著
角川書店 2007年6月発行
皆さんは、「もしも○○になったら」と考えてみたことはありますか?私はもちろんありますし、多くの人も一度は考えてみたことがあるのではないかと思います。そして、その多くは現実ではそうそう起こりえない、または空想的なものがほとんどではないでしょうか。
この物語の主人公となる湯浅茂央は、超エリート校に通う高校生です。茂央の所属する3年A組はその中でも学力の高い生徒のみが集まるクラスであり、茂央はそんなクラスでトップの成績を誇るほどに頭の良い生徒です。ある日、茂央をはじめ勉強づけのクラスに放送が流れます。その内容とは、「今、私たちは職員室を占拠し先生を人質に取った。解放してほしければ48時間以内に2000ピースのパズルを校内から探し出し、完成させろ。」というもの。当然クラスは大混乱になり、茂央は皆の統率を取ろうとしますが、各々の個性が強いこのクラスでは、それもままなりません。そんな中、かつてクラスメイトだった三留が校内にいるところを犯人グループに取り押さえられ、脅威を示すために見せしめに———。
この事件の黒幕は誰なのか。その目的は?タイムリミットが迫る中、クラスは団結できるのか。頭の良い生徒たちはどう乗り越え、パズルは何を示すのか。かなり衝撃の展開も待ち受けています。ドラマ化や映画化もされた、とても面白い作品です。ぜひ読んでみてください!
第122回 「答えがひとつではない問」に向き合いたい人にオススメ

図書館 学生アルバイト 田中 美咲
私のオススメ
『汝、星のごとく』
凪良ゆう著
講談社 2022年8月発行
―正しさだけですべてを決められたら、どれだけ楽だろう。
瀬戸内の穏やかな海に浮かぶ島で育った高校生・暁海(あきみ)と、京都から転校してきた櫂(かい)。大人たちの身勝手な事情に振り回され、孤独を抱える二人は互いの心に空いた穴を埋めるように次第に惹かれ合い、大人になるにつれて徐々にすれ違っていく。事務的なやり取りしかつながりがなくなり、そのつながりすらも切れそうだった時、櫂の身に異変が起こる。櫂の母親から頼まれた暁海は、再び櫂に会い、“今を大事にする”ために動き出すことを決意する。 周囲の人から見れば一風変わった関係の二人だが、果たして、“正しさ”とは……?“愛”とは……?
瀬戸内の美しい風景を舞台に、登場人物たちの繊細な心の動きと、複雑に絡み合う人間模様が丁寧に描かれた作品です。 第20回本屋大賞受賞作で映画化も決定しているので、ぜひ一度手に取ってみてください。 読了後はきっと、『汝、星のごとく』というタイトルに込められた意味がわかると思います。 そして、“正しさ”や“愛”という言葉について、もう一度、よく考えてみてください。 あなたは、“正しさ”とは何なのか、“愛”とは何なのか、説明ができるでしょうか? また、何をもって、その答えが“正しい”と言えるのでしょうか?
第123回 生々しい人間関係を見たい人にオススメ

図書館 学生アルバイト 生駒 美鈴
私のオススメ
『おいしいごはんが食べられますように』
高瀬隼子著
講談社 2022年3月発行
私が紹介する本は、髙瀬隼子さんの『おいしいごはんが食べられますように』です。
この作品は「食べる」という日常的な行為を通して、人間関係の複雑さや生々しさを細かく描き出しています。舞台となるのは、現実にもありそうな、ごく普通の職場。そこで毎日起こる出来事や、漂う微妙な空気、言葉にできない違和感や感情が繊細に描かれています。
物語は決して派手な展開を見せるわけではなく、淡々と進んでいきますが、作品全体を通してまとわりつくような不快感があり、読者はなんとも言えない気持ちにさせられます。一方で、作品に漂う殺伐とした空気感や出来事の中にも、「これは自分にも当てはまるかもしれない」と思わせるリアリティがあり、登場人物の黒い感情や行動にぎょっとしながらも、それを完全には否定できない自分に気づかされる瞬間もあります。
穏やかな表紙やタイトルとは裏腹に、内容はとてもヘビーです。そして、『おいしいごはんが食べられますように』というタイトルも、読む前と後ではまったく異なる響きを持つようになるでしょう。
読後感は決して軽やかではありませんが、それでも自分の中で深く印象に残る一冊です。興味がある方はぜひ読んでみてください。