バックナンバー 第31回~第40回

第31回 学生アルバイトおすすめ本

オススメ本
  図書館 学生アルバイト 荒島 可奈

  私のオススメ
   
『悪童日記』

   アゴタ・クリストフ著 堀 茂樹訳
   早川書房 2001年 

 戦争中に母親と離れ、祖母の待つ田舎へ疎開させられた双子の兄弟。
しかしその祖母は周りに住む人たちに「魔女」と呼ばれる、残忍な性格の持ち主だった。
寝床も食事も与えられず、暴言ばかり吐かれる日々をうけ、双子は自分たちが強くなろうと決意します。
暴言を図れるのが苦痛なら、「苦痛」を感じなくなるまでお互いを罵り合い、殴られるのが痛いなら「痛み」を感じなくなるまでお互いを殴りあい、双子は無感情で冷静になっていきます。そんななかで出会った少女、将軍、母親、そして双子の父親との係わり合いが非常に面白いです。暴力や性的な過激描写が多いですが、すべてを忘れる衝撃のラストを見れば、呆然自失となること間違いなし!夜風が心地よくなってきた今頃、背筋を通り抜ける恐怖がおススメのお話です。

  

第32回 学生アルバイトおすすめ本

オススメ本 
  図書館 学生アルバイト 小池 ななみ

  私のオススメ
   『号泣する準備はできていた』

   江國 香織 著
   新潮社刊 2003年 

 私はたぶん、泣き出すべきだったのだ――蒸し暑い夏、17歳だった「私」は、小学校の時の同級生、河村寛人と海へドライブに出かける。何一つ愉快ではなかったのに、大人になっても思い出すのはその日のこと…。(じゃこじゃこのビスケット)
 夫がいながらも、他の男性に恋をしてしまったなつめ。夫の母親と旅行に出かけている間も、その男性のことを思い出して…。(洋一も来られればよかったのにね)
 この本は、主人公たちがみんな、泣き出してしまいたくなるような出来事に遭遇します。それなのにどこか幸せそうで、落ち着いた雰囲気のまま1つ1つの物語が終わります。どの物語もつくられた世界なのに描写がリアルで、現実的ではないのになぜか共感できるところがあります。
 最初にあげた2話の他にも「熱帯夜」「手」など、全12話が収録されています。第130回の直木賞を受賞した作品でもあります。
 もしも、毎日が憂鬱だと感じたり、辛いことがあったときはこの本を読んでみてください。同じように悩んでいる女の子たちに出会えますよ。


 

第33回 学生アルバイトおすすめ本

オススメ本
  図書館 学生アルバイト 中野 そよ香

  私のオススメ
   『和菓子のアン』

   坂木 司 著
   光文社刊 2010年 

 梅本杏子は食べることが大好きで、少しぽっちゃりした18歳の女の子。
 杏子は高校卒業後、特にやりたいことも無く、ひょんなことからデパ地下の和菓子屋「みつ屋」でアルバイトを始めます。初めはわからないことばかりの杏子でしたが、和菓子の奥深さを知っていくうちにますます和菓子が好きになっていきます。
 自分と同じ年代の女の子が主人公なので、共感できるところや応援したくなるところがたくさんあります。杏子の一生懸命な姿に励まされ、自分も頑張ろうと思えます。また、個性的な登場人物が多いので読んでいて面白いです。
 みつ屋で起こる不思議な出来事を、和菓子や日本の文化についての知識を使って読み解いていく推理小説として読んでも楽しいです。

  

第34回 学生アルバイトおすすめ本

オススメ本
  図書館 学生アルバイト 藤本 瑞希

  私のオススメ
   『怒り』上・下巻

   吉田 修一 著
   中央公論新社刊 2014年 

 私が今回おすすめするのは、吉田修一さんの「怒り」という小説です。
 1年前に八王子である夫婦が惨殺される事件が起こります。事件現場には「怒」という、犯人が書いたと思われる血文字が残されていました。事件後、被害者の遺品や、目撃情報から犯人は「山神一也」という人物であると判明。しかし山神は既に逃亡しており、この事件は未解決状態になります。整形をして逃亡を続ける山神を、難航しながらも追いつづける警察は、テレビで公開捜査番組を放送します。
 その後、番組に寄せられた証言から「山神」と思わしき人物が3人登場します。
 ・千葉の漁港で働いている年歴不詳の「田代哲也」
 ・沖縄の無人島にこもっているバックパッカーの「田中信吾」
 ・東京都内の公園で姿を見かける、住所不定の「大西直人」
この3人の中に、果たして「山神」はいるのでしょうか。
3人の男それぞれの視点から物語が描かれており、読み応えのある作品です。何回も繰り返して読みたくなる作品なので、興味の湧いた方はぜひ読んでみてください。

 

第35回 学生アルバイトおすすめ本

オススメ本 
  図書館 学生アルバイト 平塚 紗月

  私のオススメ
   『今日も朝からたまご焼き:お弁当生活はじめました。』

   森下 えみこ 著
   KADOKAWA 2013年 

 皆さんは、朝お弁当を作っていますか?
私は大学一年生の頃、実家暮らしを理由に母が弟のお弁当を作るついでに私の分も作ってもらっていました。朝お弁当を作る時間がないのと、母のお弁当の方が美味しいという恥ずかしながらの理由です…。
 この「今日も朝からたまご焼き」という本はちょっと自分もお弁当頑張って作ってみようかな、と思える本です。主人公は社会人女性の一人暮らしのお話ですが、分かる!分かる!と思いながら読んでいたらあっという間に読み終わっていました。
 私もお弁当作りでもなんでも新しいことを始めようとするとまず形から入ってしまいます。主人公の女性と同じでお弁当箱を買って満足してしまい、そのあとは面倒くさくなり結局作らずじまいに…。また作り始めると手の込んだ可愛らしいお弁当ではなく、いかに簡単に短時間でお弁当っぽいものを作るかという考えになってしまいます。また、主人公同様箱が大きすぎたり、おかずがあまりないと空きのスペースに困ったり、高校生の頃は母が箸の入れ忘れしていると怒っていたけど、自分も忘れてしまい今になって母に申し訳なく思ったりと。
 ですが、初めて自分ひとりでおかずを入れてご飯を入れて完成したお弁当箱を見ると、とっても嬉しかったのを思い出しました。とても楽しいお話で、絵も可愛らしいのであまり本を読む時間がない方にもオススメです。

 

第36回 学生アルバイトおすすめ本

オススメ本
  図書館 学生アルバイト 荒島 可奈

  私のオススメ
   『ゲド戦記』全5巻、外伝

   アーシュラ・K・ル=グウィン 著 清水 真砂子 訳
   岩波書店 1976-2004年 

 皆さんはこの本の名前を聞いたことがあるでしょうか。
実はこの本、宮崎駿の息子である宮崎吾郎監督により、スタジオジブリで映画化された作品です。手嶌葵さんの歌や、V6の岡田准一さんが声優を務めたことでも有名になりました。
 しかし映画『ゲド戦記』と小説『ゲド戦記』では、解釈および脚本、世界観までもがかなり異なります。まず主人公すら違うので、映画を見た人は面食らうかもしれません。
 この本の世界観は、幻想的でありながら非常に緻密に作り上げられています。船に風を送る魔法や夢を見させる魔法、ドラゴンと人との関係など、いかにもファンタジーで胸が躍るような描写もある一方で、魔法が存在することにより生まれる宗教団体や戦争、差別化など、力を持った人間の醜い感情描写も描かれています。魔法が使えるようになればなるほど、主人公は魔法を使わないようになります。呪文を知れば知るほど、言葉に気を付けるようになります。言葉に力が宿るからです。幻想と醜さ両方の細かい描写によって、この本は読んでいるうちに本当にそんな国があるような、主人公たちが生きているような感覚にとらわれます。
 大きく取り上げられていませんが、間違いなく傑作のファンタジーです。ぜひ読んでみてください。

 

第37回 学生アルバイトおすすめ本

オススメ本
  図書館 学生アルバイト 小池 ななみ

  私のオススメ
   『天国旅行』

   三浦しをん 著
   新潮文庫刊 2013年 

 「現実に絶望し、道閉ざされたとき、人はどこを目指すのだろうか。すべてを捨てて行き着く果てに、救いはあるのだろうか」
 森で自殺しようとした富山明男は、そこで出会った若い男に助けられ死に損ねる。二人はそこで互いの話をし、酒を飲み… -「森の奥」
 「やっぱりあのとき死んでおけばよかったんですよ」うんざりするくらい同じ言葉を繰り返す妻。死に直面したことは何度もあったが、やはり我々は生きてきて正解だったと、夫はパソコンに遺言を残す… -「遺言」
 密かに憧れていた立木先輩がある日突然死んだ。その後、先輩と付き合っていた初音と、先輩はなぜ死んでしまったのかを二人で調べるようになり… -「炎」
 恋人の香那が死んでしまった。しかし「僕」の隣にいるのは、香那だ。死んでしまったはずの恋人の姿がなぜか見えてしまう「僕」の話。-「星くずドライブ」
 どのお話も、「生と死」について書かれています。一見、悲しかったり怖かったり苦しかったりするのかと思われますが、そんなことはありません。読めば不思議と心が温まり、大切な人に会いたくなりますよ。読み終わった後に言葉にならない感情が生まれる作品です。七つのお話で構成されているので、是非気軽に読んでみてください。収録されている「炎」は一度、短編作品として実写化もされています。  

第38回 学生アルバイトおすすめ本

オススメ本
  図書館 学生アルバイト 中野 そよ香

  私のオススメ
   『翻訳できない世界のことば』

   エラ・フランシス・サンダース著 前田まゆみ訳
   創元社 2016年 

 「この気持ちをどうやってことばにしたらいいんだろう?」「この状況にぴったりのことばってなんだろう?」そう思ったことはありませんか?
 この本では、そのような一言で表すことができない世界中のことばを紹介しています。例えば、「PISAN ZAPRA(ピサンザプラ)」はマレー語で「バナナを食べる時の所要時間」のこと。「TIAM(ティヤム)」はペルシア語で「はじめてその人に出会ったときの、自分の目の輝き」。このように、くすっと笑ってしまうようなものからロマンティックなものまで幅広いことばが紹介されています。日本語の「木漏れ日」「わびさび」「ぼけっと」なども載っています。
 少し疲れたとき、うまくいかないとき、この本を読んでみてはいかがですか?ステキなことばとイラストがあなたの心をやわらかくしてくれるはずです。  

第39回 学生アルバイトおすすめ本

オススメ本  図書館 学生アルバイト 藤本 瑞希
  私のオススメ
   『空の拳』

   角田 光代著
   日本経済新聞出版社 2012年 

 編集者の新入社員となった那波田空也は、文芸編集志望であったにもかかわらずボクシング雑誌の編集部に配属されてしまいます。上司に命じられるままジムに取材に行き、同世代の選手たちと出会います。空也はスポーツに興味がないため、初めは乗り気ではありませんでしたが、人気もなく金ももらえない過酷なスポーツに打ち込むボクサーたちの姿を見て、自らもボクシングに魅了されていきます。
 彼らがその手でつかみ取るものは、いったい何なのか――。
 ボクサーの視点ではなく、ボクシング経験のない編集者の目線で描かれているので、ボクシングを理解しやすい作品です。ぜひ読んでみてください。  
  

第40回 学生アルバイトおすすめ本

オススメ本
  図書館 学生アルバイト 平塚 紗月

  私のオススメ~ほっこり涙する絵本を紹介~
   『オルゴールワールド』

   にしの あきひろ著
   幻冬舎 2012年 

 今回、私が紹介する本は『オルゴールワールド』という絵本です。
皆さんは、「キングコング」というお笑い芸人の西野さんをご存知でしょうか。
ここ最近になり、絵本を出版したことで有名になったのであまり知らない方も多いのではないでしょうか。最も有名な作品の一つに『えんとつ町のプぺル』という絵本があります。私はこの絵本をきっかけに西野さんの書かれた物語が好きになりました。『えんとつ町のプぺル』もそうですが、今回紹介する絵本もとても事細かに描かれています。絵は白黒のみで少し暗いイメージを持つかもしれませんが、読んでいくと色とりどりの絵で描かれているかのような、様々な色が浮かび上がってくる気持ちになるのも魅力の一つです。
 この物語は、オルゴールの音色が一人のカンパネラという少年と「スキ」を知らないヨナヨナをつなぐ物語です。人間の世界が二つに引き裂かれた遠い昔の時代、争いによって大切なものを奪われ、嬉しい・悲しい感情を知らずに育った二人がオルゴールの音色によって感動や奇跡を起こしていく展開に涙します。ぜひ、皆さんもこの物語を読み、世界がつながる体感をしてみてください。