バックナンバー 第191回~第200回
第191回 自分の短所ばかり気になってしまう人にオススメ
松江キャンパス 図書館職員 池田理絵
私のオススメ
『夜明けのすべて』
瀬尾まいこ 著
文春文庫 2023年9月発行
この小説は、小さな金属会社に勤めるPMS(月経前症候群)を患った美紗とパニック障害を患った山添。同じ職場の男女2人が互いの病気を知ったことから始まるお話です。
2人は悩んだり、迷ったり、立ち止まったり、時には感情をぶつけ合ったりしますが、お互い他人から理解しづらい病気を患っているからこそ、次第に同志のような気持ちが芽生え、不器用ながらも助け合い、少しずつ前を向いて歩き始めます。
読む前は、PMSとパニック障害という二つの病気の苦難がテーマとなっているので、重たい話なのかなと思っていましたが、主人公2人のクスっと笑ってしまうようなやり取りや絶妙な距離感、2人を支える周りの人たちがみんな優しい人ばかりで、読み終わった後はほっこり、温かい気持ちになれるお話でした。
人は、生きていると様々な困難にぶつかったり、自分の至らなさに落ち込んでしまうことがあると思います。でも、人は誰しも完璧じゃないからこそ、足りないからこそ、お互いに補い支え合って生きている、だから、できないことを嘆くのではなく、自分なりにできることは何かを考えてやっていくことが大切なのではないかと、私はこの小説を読んで、強く思いました。
また、この小説は、映画化が決まっており、松村北斗さんと上白石萌音さんのW主演で2024年2月9日に公開されます。主人公2人のやり取りがどのように映像化されるのか、また、原作との比較もとても楽しみです。個人的には先に原作を読んでから映画を見るのをおすすめします。
第192回 やさしくなりたい人にオススメ
松江キャンパス 図書館司書 野津 恵
私のオススメ
『へいわとせんそう』
たにかわしゅんたろう 文 / Noritake 絵
ブロンズ新社 2019年3月発行
この本は、タイトルの通り、「平和」と「戦争」をテーマにした絵本です。本を開いて左には「へいわのボク」が笑って胸を張って立っていて、右には「せんそうのボク」が悲しそうな顔でしゃがんでいます。このように、短い言葉とモノクロのシンプルな絵で、平和と戦争を比較しながら進んでいきます。
私がこの本を知ったのは、保育園の保護者研修会のときでした。読み聞かせの講師の方が、「子どもに戦争のことを伝えるのは刺激が強すぎる。でも、この本の表現ならいいと思う」と紹介され、さらっと読んでくださったのですが、優しいながらも強いメッセージがある内容に、大きく心を動かされました。戦争が悪いとか怖いとか悲しいとか、正解や感情を決めつけるように書いていないところも、自分なりに考え、感じることができていいなと思います。
それでは、「みかたのかお」と「てきのかお」は、どのような違いがあると思いますか?その答えのひとつが、この本の中にあります。ぜひ手に取ってみてください。
第193回 自分の名前を検索したことがある人にオススメ
松江キャンパス 図書館専門員 北井由香
私のオススメ
『同姓同名』
下村敦史著
幻冬舎 2020年9月発行
同姓同名、このタイトル通り同姓同名の登場人物が10人も出てくるこの小説。
怒涛の展開で話は進み、あっという間に物語に引き込まれてからのタネ明かし。読者も登場人物たちも、最初から最後まで名前に振り回され、名前に捉われ、最後は、見事に名前に裏切られます。
そうです、私たちは、誰も思いも寄らない結末を迎えることになるのです。
まさに叙述トリックを使ったミステリー小説。最後の最後の最後まで絶対に気を抜かないで読んで下さい。
第194回 俳句に触れてみたい人にオススメ
松江キャンパス 図書館司書 野々村佳緒里
私のオススメ
『寝る前に読む一句、二句。 : クスリと笑える、17音の物語』
夏井いつき・ローゼン千津著
ワニブックス 2017年11月発行
私は俳句が好きというわけではないので、当然俳句も詠めませんが、本書の著者の俳人夏井いつきさんのことは知っています。芸能人が様々な分野の才能を競い合うテレビ番組の俳句コーナーでお馴染みですよね。
夏井さんが妹のローゼン千津さんと、紹介された俳句の解釈や関連するお互いの人生などについて語り合っているのですが、とにかくお二人のエピソードが面白いため、俳句に馴染みのない私でも楽しんで読むことができました。また、身近な話題と関連付けられているためか、「その気持ち分かる」と、共感して楽しめる句もありました。
本書を読んで、表現したい景色や感情を17音でうまく言い表すことが出来たら、俳句はとても楽しいものなのだろうなと感じました。難しく解説されているわけではないので、軽く俳句を楽しんでみたいという人におすすめです。
第195回 人に「伝わる」技術を身につけたい人にオススメ
松江キャンパス 図書館職員 池田理絵
私のオススメ
『伝わっているか?』
小西利行著
株式会社宣伝会議 2014年7月発行
皆さんは人に何か「伝える」とき、自分の思っていることがうまく相手に伝わらず悩んだ経験はありませんか?
本書は、「伝える」を「伝わる」にするために何を考えるべきか、そのメソッドが短編ストーリー形式で書かれています。
例えば、
・ブサイクな男ふたりが、会社一の美人と合コンするためには?
・お金を一円も使わずに、新商品をたくさん売るには?
などさまざまなコミュニケーションの悩みを抱えた人々が登場し、謎のしゃべるイルカがその悩みを解決していきます。会話形式で話が進んでいくので、本を読むのが苦手な人もスラスラ楽しく読めます。
私はこの本を読んで、「コミュニケーションはセンスではなく技術です。一部の才能がある人だけがうまく使える技術ではなく、誰でも使える技術です。」という著者の言葉がとても印象に残りました。
“伝えるプロ”コピーライターの著者が多くの失敗と試行錯誤を経て作り上げた「伝わる」言葉の作り方、使い方、考え方=「伝わる言葉のメソッド」がこの一冊には詰まっています。 このメソッドを一度習得すれば、誰でも簡単に使えて、仕事でも私生活でもさまざまな場面で応用できます。きっとあなたの大切な気持ちも相手に「伝わる」ようになります。
コミュニケーション上手になりたいあなたにぜひおすすめしたい一冊です。
第196回 奇妙な世界を覗きたい人にオススメ
松江キャンパス 図書館司書 野津恵
私のオススメ
『その怪文書を読みましたか』
梨×株式会社闇著
太田出版 2023年12月発行
今月の図書館の展示から、こちらの1冊を紹介します。
この本は、実際に行われた展覧会で飾られた怪文書を、書籍にまとめたものです。怪文書というのは、「意味不明な主張をしている文章のこと。内容は誹謗中傷や被害妄想、非現実的なものが多い。ほとんどが根拠不明で誤った情報を元にしている。」と、本の中に書かれています。
載っている怪文書は、著者のコレクションというていですが、すべて作り物です。ところが、ひとつひとつ見ていくと、どこかの街角の張り紙や掲示板で、SNSの書き込みで、家の郵便受けの中のチラシで、実際にどこかで見たことがあるような、ないような、不思議な印象を受けます。 このたくさんの怪文書を読み進めるうちに、何か気づくことがあると思います。最後に仕掛けもあり、おもしろいです。ぜひ実際に手に取って、体験して考察してみて下さい。
第197回 暑い夏、お出かけは無理!!な人にオススメ
松江キャンパス 図書館専門員 北井由香
私のオススメ
『世界のダンジョン ―冒険をめぐる情景― 』
パイインターナショナル編著
2020年8月発行
ダンジョンとは、「地下牢(ろう)。土牢。または、ロールプレーイングゲームなどの舞台となる、迷路に似た構造をもつ空間」のことです。この本では、世界各国のダンジョンが紹介されています。どの空間も現実にこんな世界が存在するのだろうかと思うくらい不思議な場所です。
人が入ることを拒んでいるような世界最大級の洞窟、魔宮ともいわれる宮殿、人が住むのをやめて廃墟となったゴーストタウン、かつて世界一人口密度が高かったのに無人化してしまった島、実際に存在する天空の城ラピュタなど、まるでゲームやアニメに出てきそうな世界の絶景を紹介しています。
私が1番気になったのは、中国にある「後頭湾村」(ホウトウワンムラ)。ここは、1950年代、漁業が盛んだったときに出来た村でしたが、今は、住む人がいないまま建物だけが20年近く放置された結果、街は緑の海。壁にはびっしりと蔦が這っています。きっとこのまま建物は埋もれて行くでしょう。その光景が何とも哀愁が漂っていて切なくなる好きな景色です。
暑い夏、外に出かけるのは、無理!!という人、この本を読んでいつもとは違った場所を冒険してみてはどうでしょうか?
"ダンジョン【dungeon】", デジタル大辞泉, JapanKnowledge, https://japanknowledge.com , (参照 2024-08-01)
第198回 懐かしさを感じた人にオススメ
松江キャンパス 図書館司書 野々村佳緒里
私のオススメ
『ねないこはわたし』
せなけいこ著
文藝春秋 2016年7月発行
懐かしい表紙に惹かれてこの本を手に取りました。この表紙の貼り絵を見れば、誰の作品か一目で分かりますよね。
私が1番心に残ったのは、『ねないこ だれだ』の創作秘話についてです。
ふとんに入らないで遊んでいると……
おばけの時間になっちゃうよ。
おばけにされて、おばけの世界へ飛んでっちゃうよ。
中略
でも描いた私は、しつけのためとか、ましてや怖がらせようなんてつもりは、全くなかった。
え、そうなの!?我が家の”ねないこ”におばけの本でも読んでみようかなと考えていた私は衝撃を受けました。それと同時に、私も子どもの頃は、このおばけをちょっと怖いと感じながらも、興味津々で読んでいたことを思い出しました。
本書は、せな氏はじめての「大人も楽しめる絵本」だそうです。様々な作品の秘話を知れることはもちろん、貼り絵の際に使用した紙や切り取った形のまま残っている紙の写真などは、まさに大人が楽しめるものとなっています。
私と同じように懐かしさを感じた人はぜひ。
第199回 片付けが苦手な人にオススメ
松江キャンパス 図書館職員 池田理絵
私のオススメ
『人生がときめく片づけの魔法』
近藤麻理恵著
サンマーク出版 2011年1月発行
私はモノをなかなか捨てられない性格で、片付けがとても苦手です。家には学生時代の教科書や何年も着ていない洋服など、必要のないものがたくさんあふれています。そんな自分を変えたくてこの本を手に取りました。
本書は、片付けコンサルタントの近藤麻理恵さんによる、一度片づけたら絶対に元に戻らない「こんまり流ときめき整理収納法」について詳しく書かれています。
著者は、片づけの極意として「一気に、短期に、完璧に、まずは捨てるを終わらせる」こと、そして「自分の持ちモノを一つ一つ手に取ってときめくか、ときめかないかで捨てるか捨てないかを判断する」ことが大切だと述べています。さらに片付けを通して自分自身と向き合うことができ、考え方や生き方、その後の人生が劇的に変わるというのです。
私は今までモノを“捨てる”こと=悪いことのように思い込んでいて、モノをためることがモノのため、と勘違いしていました。しかしこの本を読んで、本当に大切なものを大切にするために役割を終えたモノを捨てる、その役割を果たしてくれたことに感謝をして手放すことが大切なんだと気付かされました。
きっと片付けが終わったあとは身も心もスッキリし、より自然体で自分らしく、楽しい毎日が送れるはずです。自分がときめくモノだけに囲まれた生活こそが、理想の生活ではないでしょうか。ちなみに私は現在、その片付けの真っ最中です。
片付けに苦手意識がある人もこの本を読んだらきっと片づけがしたくなります。 片づけをして人生を変えたい、理想の暮らしを実現させたい、そんなあなたにぜひ読んでもらいたい1冊です。
※バックナンバーはこちらです