バックナンバー 第171回~第180回

第171回 気持ちを整理したい人にオススメ

おススメ本
  出雲キャンパス 司書 藤岡 千秋
   私のオススメ
   『湖とファルセット』

   田村穂高著 
   現代短歌社   2022年3月発行


   気持ちがもやもやすることってありませんか? 今、私は怒っている? それとも悲しい? なんと表現したらいいのかわからなくなって、わー! と叫びだしそうになることがありませんか?
  そんな時、この本を読んでみてください。怒り、悲しみ、喜び、それらの感情がむき出しになった短歌が、自分の気持ちを整理してくれます。ああ、私は今悲しかったんだ、と。
  一つ一つの短歌から様々な感情が伝わってきます。ぜひ手に取って彼の感情に触れてみてください。

 

第172回 苦手を克服したい人にオススメ

おススメ本
  松江キャンパス 司書 S
   私のオススメ
   『字が汚い!』

   新保信長著 
   文藝春秋   2017年4月発行

   自分が書いた字を見てつくづく思うのは、「もっときれいな字が書けたらいいのに」ということ。パソコンやスマートフォンが普及した昨今ですが、手書きする機会は意外となくならないものです。この本の著者も「字が汚い」ことがコンプレックス。美文字になりたい!と一念発起し、ペン字練習帳やペン字教室にチャレンジ。字がきれいな人がいると聞けば書き方のコツを聞き、字を書くのに最適な文房具を探求、とにかく「字が汚い」ことに大真面目に向き合った著者の字は、練習を経てどのような変化を遂げるのか。「丸文字」ブームや各界の著名人が書く文字の考察も楽しく、字を書くのは少し苦手、という人にこそぜひ手に取ってみてほしい一冊です。
 

第173回 本を読みたいけれど何を読んだらいいのかわからない人にオススメ

おススメ本
  松江キャンパス 司書 野津 恵
   私のオススメ
   『容疑者Xの献身』

   東野圭吾著 
     文藝春秋   2005年8月発行


   私の社会人1年目は、書店の販売員をしていて、文庫売場の担当のひとりとして勤めていました。文庫の担当は他に4人程いて、書店員として長年働いておられる人ばかり。仕事中、最近読んだ本の話になり、当時とても人気だったこの本をそのベテラン書店員の全員が「すごくいいよね!」と話して盛り上がっていて、そうなんだ〜人気だもんなぁなどと思って聞いていただけだったのですが、数年後、映画化された作品を見て納得と同時に、その書店員の方々を改めて尊敬。造詣が深い方はその分野に対してしっかりと力強い中身が伴っているものを知っているんだな、その方々からもっと意欲的に吸収しなければと思いました。私にとっては初心を思い出す一冊です。
 人間の正しさって?幸せって?ラストシーンには考えさせられます。読んだことのある人も、この機会にもう一度読み直してみてはいかがでしょうか。

 

第174回 自分を豊かにするお金の使い方を知りたい人にオススメ

おススメ本
  松江キャンパス 教務学生課 青笹 実香
   私のオススメ
   『「好き」を「お金」に変える心理学』

   DaiGo著 
   PHP研究所   2019年4月発行

   みなさん「お金」についてゆっくり考えたことはありますか?私はなんだか難しいような感じがして、特に学生時代は考えたことはなかったように思います。
   どの年代になっても「お金」と「将来」については嫌でも考えなければならなくなります。 少子高齢化で老後のために貯金をしないと!と私も常に考えていますが、この本を読んで、お金をどう使うのか、自分の人生をどう生きていくのかとても考えさせられました。
   メンタリストDaiGoが心理学の観点から、「お金」について、「将来」について考えさせられる内容になっています。これから就職や進路に悩むことが出てくると思います。この本で伝えられている観点でぜひ将来について考えてみてほしいです。

 

第175回 料理に興味がない人にもオススメ

おススメ本
  松江キャンパス 管理課 石原 沙也子
   私のオススメ
   『おしゃべりな人見知り』

   山本ゆり著  
   扶桑社   2021年3月発行

   料理コラムニストの山本ゆりさんのエッセイです。
   レシピももちろん素敵ですが、何といっても山本さんが語る日常が抜群に面白く、 初めてエッセイでお腹を抱えて笑うという経験をしました。最初は職場で昼休みに読んでいましたが、ニヤニヤした顔はマスクで隠せるとはいえ、肩を震わせて
笑ってしまい、 すぐに家に持ち帰ったほど。軽快な関西弁で語られるさまざまエピソードに、とりこになること間違いなしです。 特におすすめなのは、「中学時代の英語の覚え方」と「ミスタードーナツのはなし」です。

 

第176回 「今後の母親との関係性」に関心がある人にオススメ

おススメ本
  松江キャンパス 教務学生課 岡﨑 淳子
   私のオススメ
   『百花』

   川村元気著
   文藝春秋   2019年5月発行


   もうすぐ父親になる主人公と若くして認知症を発症した母親。少し複雑な過去を持つ母子の物語です。
 父親のいない家庭で育ったけれど、間もなく父親になることへの不安や戸惑いも感じながら、現実と過去を行ったり、来たりする母親にどう向き合って良いのか困惑する息子。最近のことは忘れていく一方で、鮮明に覚えている過去の思い出を語る母親。その想い出を聞いて、自分が忘れていた記憶を思い出す息子。まるで記憶と忘却が2人の間で引き合っているかのように感じます。そんな2人が避ける過去のできごとを知り、いろいろな想いが混在し、切なくなりました。
 「記憶」と「忘却」の2つのキーワードが心に強く残る母子の愛情物語です。映画化され、主人公を菅田将暉さん、母親を原田美枝子さんが演じています。まずは、映画であらすじを知り、読書で深く読み込んでみてはいかがでしょうか?

 

第177回 少し元気が出る本を読みたい人にオススメ

おススメ本
  松江キャンパス 事務部長 田中 浩史
   私のオススメ
   『ファーストペンギン シングルマザーと漁師たちが挑んだ船団丸の奇跡』

   坪内知佳著
   講談社   2022年10月発行


 この本のタイトルである「ファーストペンギン」という言葉は、ペンギンのある習性が語源となっています。ペンギンの群れにはリーダーが存在せず、「最初に動いた1羽に追従する」という習性があるそうです。シャチやアザラシといった天敵がいるかもしれない海へ、餌である魚を求めて最初に飛び込む勇気ある果敢なペンギンを指します。

 著者は、山口県萩市沖に浮かぶ大島の巻き網船団の漁労長に月三万円で新しい事業を考えてくれと頼まれ、安価で投げ売りされていた混獲魚を箱詰めして「粋粋(いきいき)ボックス」と名付け、漁協を通さずに料理店や消費者に直接販売することを思いつきます。 農林水産省から6次産業化の認定を受けますが、他の船団や漁協の反発・嫌がらせを受けながらも、仲間の漁師を宥めすかし、時には殴り合いの喧嘩もしながら、数年かけて事業化につなげます。
 事業化が実現できたことで、著者の挑戦はマスコミにも取り上げられていますが、著者も述べているとおり、成功は一人の力ではなく、支えてくれる人達がいてくれたからであり、事業に限らずいろいろな場面で周囲の知人や友人の力を借りることは大切ではないでしょうか?

 

第178回 逆境の中でも愛を持った人間の心を感じたい人にオススメ

おススメ本
  松江キャンパス 教務学生課 新田 紀子
   私のオススメ
   『ラーゲリより愛を込めて』

   辺見じゅん原作/林民夫映画脚本 
   文藝春秋   2022年8月発行


 皆さんは心の支えになっているものがありますか?
 私は、今年の夏に戦争の遺族会講演会に参加させて頂きました。そこで、遺骨を埋葬するために毎年「硫黄島」へ行っている方のお話を聞きました。今でも、たくさんの遺骨が無残に埋まっている状態だそうです。私は衝撃をうけ、戦争は命の尊さを軽んじて人を狂わせてしまう恐ろしいものだと改めて感じました。そんな時、実話をもとにした「ラーゲリより愛を込めて」の映画予告のチラシを目にし、私は、すぐに書店へ行き本書を手にしました。
 第2次世界大戦後、日本が戦争に負けると多くの日本人がソ連軍の捕虜となり、その中の一人に山本幡男さんの姿がありました。極寒のシベリア収容所(ラーゲリ)で重労働を虐げられ、食料も十分に与えられることなく、栄養失調や過労で次々に抑留者は亡くなっていきました。人間を人間として扱われない、そんな理不尽さがこの地では当たり前でした。誰もが、生きる意味も気力さえない状況で、山本さんは仲間たちに「希望をもって、生きていれば必ず明るい未来がきます」「帰還(ダモイ)の日は必ず来ます」と励まし支え続けてきました。始めは、前を向いて生きる山本さんに嫌悪をもっていた者、避けてきた者もいましたが、強い信念を持ち続ける姿に、しだいに固い絆で結ばれていき真の友となっていきます。山本さんの最後となる言葉を日本で待っている妻や4人の子供たちに届けるためラーゲリの仲間たちは団結します。
  人生を愛し、人を愛し、家族を愛し、言葉を愛し、決して希望を捨てない。この作品は私自身を見直すきっかけにもなりました。そして、世界平和への願いを強く感じる一冊です。ぜひ、原作を読んで、映画館に足を運んではみてはいかがでしょう。

 

第179回 まずは漫画から読んでみようと思う人にオススメ 

おススメ本
  松江キャンパス 管理課 田中 絵美
   私のオススメ
   『まんがでわかる「学力」の経済学』

   中室牧子著/松浦はこ作画 
   ディスカヴァー・トゥエンティワン   2018年12月発行


 タイトルを見てはじめは難しそうだなと思いましたが、一気に読めます。

 データに基づき教育を経済学的な手法で分析するのが教育経済学とのこと。この本は、子どもの教育・子育てについて、科学的根拠に基づいた分析から導き出された手法を漫画(解説もあり)で分かりやすく書かれてありますので、この分野に関心のある方はぜひご一読ください。
 私自身、子どもの教育や子育てについて、インターネットの検索で得た情報に影響されて行動することが多々ありました(今もありますが)。この本を読んで、特定の個人の成功体験に振り回されすぎず個々の特性にきちんと目を向けること、教育や子育てに限らずですが根拠や目的ってなんだろうと問い考えることの大切さを再認識しました。書籍版は、より内容が濃いようなのでそちらも読んでみようと思います。

 

第180回 いつか難しい本も読めるようになりたい人にオススメ 

おススメ本
  松江キャンパス総合文化学科  日髙 正樹
   私のオススメ
   『実証分析入門 データから「因果関係」を読み解く作法 』

   森田果著 
   日本評論社   2014年6月発行

 「難しいことを難しく説明する本」ではなく、 「難しいことをわかりやすく、なんならポップに面白く説明してくれる本」ないかな、と思っていた時に出会いました。

  最近、何にせよ「データに基づく」ことが重視されていますが、 専門知識がなければ、そもそもデータから何が読み取れるのかかわからないこともたくさんあります。
でも、この本は、カタいタイトルと表装からは想像もつかないくらいわかりやすく、面白くわかりやすいです。 例えば、離婚について、「夫婦双方の同意が必要」だという法律と、「どちらか一方の同意があればよい」という法律、 どちらが離婚をする人は増えるでしょうか?
  一見、夫婦どちらかが同意すれば離婚できる制度の方が、離婚率は高い気がします。 だって、離婚のハードルは高くなりますから。 けれども、「離婚しやすい法律の方が、(相手に離婚を突き付けられたくないから、)相手を大事にして離婚しない」 と考えることもできます。
   どちらの法律の方が離婚率が高いのか、低いのかという問いの結論は、 本を読んでもらえれば割と最初の方に書いてあります。
  他にも、「中世の魔女狩りって、気温が下がったから行われたんじゃないの?」とか、 一瞬、「?」となるような問いがたくさんあり、それはどうやってデータで”実証”できるのかが書かれています。 他にもB’zとか、Prefumeとか、人類補完計画とか、 「それがどう絡むねん」という単語も出てきますが、読んでのお楽しみです。
  ここまで読んでくれた人は多少本書に興味があると思うので、念のために記すと、 この本の内容は統計学を用いた分析手法を紹介しており、 「重回帰分析」とか「固定効果」とか難しい言葉も出てきます。 けれども、わかりやすい説明が多いので、全く知らなくとも、結構読める本です。 統計の勉強というより、教養としても役立つ本です。
すこし背伸びして難しい本も読めるようになりたいけど、 わかりやすくて面白い本がいいという大学生にはお勧めの一冊です。