バックナンバー 第181回~第190回
第181回 幕末維新史に興味がある人にオススメ
松江キャンパス 管理課 枝野 宏貴
私のオススメ
『明治維新をとらえ直す 非「国民」的アプローチから再考する変革の姿』
奈良勝司著
有志舎 2018年9月発行
それらの世界の中では、「江戸時代=西洋化・近代化が為されていない前時代⇔明治時代=近代化を成し遂げた先進的な大変革の時代」という断絶された時代観が無意識のうちに当たり前の様に共有され、その変革に携わった英雄たち(往々にしてハンサムに描かれる)の心情に観客が同化し、感動や共感を呼び起こすための「癒し」のコンテンツとして、歴史は消費されています。
明治維新150周年の年に発刊されたこの書籍は、そのような現状に疑問を呈すとともに、「私たちが生きている社会はどのようにして成り立ったのか」を明らかにするという歴史学本来の目的に改めて立ち返り、近世と近代との繋がりを意識しながら、今日の私たちにとって当たり前になりつつある明治維新のイメージを再考してみよう、という内容です。
対象としては、幕末期〜明治維新期にかけての政治的事象が広く分析されていますが、明治維新によって「何が」近代化したのか、という視角に基づき、江戸時代の社会やそこで生きる人々の意識の構造分析に特に力が入れられています。明治維新は、近世/近代を分ける画期ではありますが、そこには断絶されたものと引き継がれていったものの両方が存在しており、決して何もかもが一新された訳ではなかったという主張が、先行研究の成果や史料の記述に基づきとても緻密に論じられていると感じました。
専門書のため、一読しただけではなかなか理解しきれない部分もあるかと思いますが、読み応えがあり非常に興味深い内容となっています。学術的な視野が広がるだけでなく、「なぜ歴史を学ぶのか?」という問いを考える機会にもなると思いますので、日本史(特に近世史・近代史)に興味のある方にはぜひ読んでもらいたい一冊です。
第182回 幼児のIT教育に興味のある人にオススメ
松江キャンパス 文化情報学科 倉橋 徹
私のオススメ
『ルビィのぼうけん』シリーズ(全4巻)
リンダ・リウカス 作
鳥井 雪 訳
翔泳社 2016年5月発行
『ルビィのぼうけん』シリーズは、プログラミングやコンピューターについて、親子で楽しく学びたい人におすすめの絵本です。前半は絵本、後半は実際に自分でやってみる練習問題となっています。また、シリーズのストーリーやキャラクター、イラストが素敵で、プログラミングに興味がない子供たちでも楽しめます。
「こんにちは!プログラミング」
好奇心旺盛な主人公の少女「ルビィ」が、宝石探しの冒険に出かけます。様々な困難を「プログラマー的思考法」で解決していきます。
「コンピューターの国のルビィ」
まるで不思議の国のアリスのように、ルビィがコンピューターの中に入り、マウスポインターを探す冒険に出かけます。コンピューターを構成する部品やソフトについてを学びます。
「インターネットたんけん隊」
ルビィは、友達と一緒に「雪のインターネット」を作ります。絵本の部分では、インターネットについて詳しく学びませんが、後半の練習問題の中で、インターネットの仕組みやセキュリティーについて学びます。
「AIロボット、学校へいく」
ルビィの友達「ジュリア」が持っているロボットを、学校に連れて行きます。授業を通じて、「AI」の得意、不得意について学びます。
著者のリンダ・リウカス氏は、フィンランド、ヘルシンキ出身のプログラマーです。また、作家でもありイラストレーターでもあります。主人公の「ルビィ」は、プログラミング言語「Ruby」が由来です。このRubyは、松江市在住のまつもとゆきひろ氏が開発したプログラミング言語で、世界中で利用されています。リンダ氏は、Rubyを使ったウェブアプリ開発基盤「Ruby on Rails」を世界中の人(特に女性)たちに広めるためのコミュニティー「Rails Girls」の創設者でもあります。またリンダ氏は、2015年に来日され、松江市のくにびきメッセで開催された「RubyWorld Conference 2015」で基調講演をされたり、「Rails Girls Matsue 2nd」に参加されました。
第183回 子どもの遊びについてより知りたい人にオススメ
松江キャンパス保育学科 藤 翔平
私のオススメ
『あそびが語る保育と発達』
河﨑道夫著
かもがわ出版 2022年1月発行
私の専門は発達心理学で、特に子どものごっこ遊びと発達の関係を研究しているのですが、授業ではあまり自分の研究テーマを扱うことはありません。 なぜなら、発達心理学で教えるべき内容の中に「遊び」という語は出てこないからです。したがって、テキストなどで遊びについて多く語られることはほとんどありません。
しかし、実際の保育を見てみると、子どもは多くの時間を遊びに費やしていますし、子どもは遊びとともに発達しているように感じます。なので、多くの学生は 授業であまり扱われない遊びについてもっと知りたいと考えているのではないでしょうか。また、保育者の方々や親御さんにとっても子どもの遊びは身近なトピックスですが、 遊びについて多くを語ってくれる育児本や書籍はそうありませんので、遊びを理解する手掛かりになる書物を求めているのではないでしょうか。
ご紹介した『あそびが語る保育と発達』は、遊びを理解するための理論と保育の中での事例をミックスした大変読みやすい書籍になっています。 おそらく、この書籍を読んだ後に子どもの遊びに接すると、書籍の内容の理解が一段と深まり、遊びの見方も豊かになるのではないでしょうか。 遊びの過程は「様式化」と「脱様式」―遊びを常にその観点で見てしまうようになるぐらい私はハマってしまいました。
第184回 なんとなく保育士や教師になりたいと思って入学したけど、
立ち止まって今一度きちんと考えたい人にオススメ
松江キャンパス保育学科 水内豊和
私のオススメ
『明日の子供たち』
有川浩著
幻冬舎 2014年8月発行
有川浩(ひろ)さんは、ラブストーリー、SF、ミリタリーなどとても幅広いジャンルの作品を数多く執筆している女性作家です。彼女の作品の代表作としては『図書館戦争』が有名ですね。小説のみならずマンガ、アニメ、実写化されています。どの作品もとてもオススメで私は大好きなのですが、今回は『明日の子供たち』を紹介します。
主人公の三田村慎平は、テレビで見たドキュメント番組に感動したからという動機で、児童養護施設の職員として働き始めます。そこで働く施設職員と、さまざまな事情で入所してきた子どもたちとのエピソード。子どもたちの抱える厳しすぎる現実―実の親が生きていても一緒に暮らすことができない、大学進学は容易なことではない、愛着形成不全で見捨てられ不安による職員に対する過度な依存と極端な手のひら返し―などを目の当たりにするでしょう。そして社会の「無知」による施設や施設の子どもたちへの偏見にも気づくはず。文庫版の「あとがき」まで必ず目を通してくださいね。
保育教育学科・保育学科の学生さんには、学生のうちにぜひとも読んで欲しい作品です。対人援助の仕事をする上での、資質と専門性、それと「覚悟」。あなたはどんな先生や保育士になりたいのでしょうか?本書を読んであらためて考えてみてください。
そうそう、地域文化学科・文化情報学科の学生さんには、ぜひ有川浩さんの『県庁おもてなし課』を絶賛オススメします。
第185回 バイタリティーを高めたい人にオススメ
松江キャンパス 地域文化学科 赤坂 一念
私のオススメ
『何でも見てやろう』
小田実著
講談社文庫 1979年7月発行
小田実氏が1日10ドルで欧米アジア22ヶ国を駆け抜ける破天荒な世界一周に出かけたのは1958年、26歳の時。しかも当時は海外旅行などなかなか手が届かなかった時代。小田氏はバックパッカーの先駆け的存在であり、本書は若者による海外放浪記の走りとなります。アメリカ、メキシコ、カナダ、北欧、南欧、エジプト、イラン、インド…各地の人々の生きざまや地元の人たちとのガチな交流が若い感性とみずみずしい筆致で綴られており、海外に出てみたいと思うその後の若者にとって本書はバイブル的な存在になりました。 (おそらく50代以上で一人旅好きの人であれば、おそらく所蔵していたであろう超ベストセラー本でもありました)
当時、文化人類学や国際関係に関心があった私自身も、たまたま大学近くの古本屋で見つけた本書を購入し即実践。ちょうど格安航空券が出はじめた時期でもあり、私も大学1年と2年の夏休みに合計4ヵ月、アルバイト代をすべて投入して中国大陸へ放浪の旅に出ました。 次はどのルートを通って次の町に安全に抜けるかといったサバイバル思案、シルクロードで砂嵐に遭い朝起きたら口の中が砂だらけという稀少な!?経験、コンビーフの缶詰を食べて食あたりした苦い経験や、中国とラオスの国境の亜熱帯ジャングルで迷子になりかけた、ひやりとした心細さなどが、昨日のことのように蘇ってきます。
今回、このオススメ本を選ぶに当たって本書をあらためて購入してみました。文庫版にもなり、なんと2022年8月で49刷を重ねていることにも驚きました。旅行時から60年以上の時を経ているとはいえ、あらためて国家や人間、文化とは…を五感で考えさせてくれる好著という意味で、今なお色あせない魅力を放ち刺激を与えてくれる一冊だといえます。
昨今、コロナ禍や円安の進行で海外旅行は手が届きにくくはなってきていますが、まずは本書を一読されバイタリティーあふれる刺激をもらってほしいと思います。そして己の好奇心が刺激されれば、「自分に何ができるかな…」と模索することからはじめても良いし、海外とはいわずまずは気になる国内各地を放浪してみても良いと思います。時間的に余裕のある学生時代に、ぜひ「なんでも見てやろう」という気概で、あちこち「踏破」してほしいです。必ずやその経験は、その後の生き方に指針を与え、バイタリティー、行動力、突破力の充電にもなりますし、何よりもご自身の成長につながります!
第186回 正義の味方が好きで、これからもそっちの側にいたいと思う人にオススメ
松江キャンパス 地域文化学科 小長谷 悠紀
私のオススメ
『フィラデルフィアの精神―グローバル市場に立ち向かう社会正義』
アラン・シュピオ著/橋本一径訳/嵩さやか監修
勁草書房 2019年6月発行
グローバルな市場主義のもと、日本ではいろんなものが安価で買えるようになっています。国産ニンニクの横に100円安い値札をつけた外国産のニンニクが並び、ほぼメイド・イン・ジャパンではないファスト・ファッションが季節ごとにセールをしています。あるいは、アフリカ産の薔薇の切り花が、〇〇モールのワゴンで1本百円とか。
どんなふうに生産・流通をおこなえば、そのような価格が実現できるのでしょう。その実現には、仕事熱心な人のアイディアや努力がさぞや積み重ねられてきたのだろうと思います。
けれど、お財布の味方にも見えるグローバルな市場主義というやつ、ホントのところは、正義の味方ではないことがわかってきました。つまり、もっと大局的に世界を見るならば。
この本のいう「フィラデルフィアの精神」とは、1944年に国際労働機関の目的についてフィラデルフィアで採択された「フィラデルフィア宣言」の考え方、姿勢のことです。それは、20世紀前半の30年におよんだ世界大戦Ⅰ・Ⅱの後、その痛みと教訓を知った人類がどのようにして後年の世界をつくっていくのかを構想したものでした。そこでの根本的な姿勢、とりわけ人間に対する考え方が、フィラデルフィアの精神です。
そのきわめてまっとうな社会正義の見地を確認しつつ、著者であるコレージュ・ド・フランスのシュピオ教授は、【今日台頭するグローバルな市場主義が、社会正義を二の次にして、資本・金融を拡大するための活動に邁進している状況】をつまびらかにしていきます。
そして、世界がフィラデルフィア精神に立ち戻ったならば、もっと違う方向でできることがあるではないかと、これから人類が築いていける将来のために、読者に問いかけています。
フィラデルフィア宣言が示されたのは、1944年。もうずいぶん昔のことです。ですが、同書を読んだら、皆さんは宣言が見ていたものに共感されることでしょう。
同時に、今日、かつてその宣言がまるでなされなかったかのように、フィラデルフィアの精神とは対極的な世界を拡大していっている「今日、世界を支配する/しつつある精神」の存在も、強く意識されることと思います。
第187回 とにかく「続けられない自分」に飽き飽きしている人にオススメ
松江キャンパス 地域文化学科 高須佳奈
私のオススメ
『ジェームズ・クリアー式 複利で伸びる1つの習慣』
ジェームズ・クリアー著/牛原 眞弓訳
パンローリング株式会社 2019年10月発行
「大切なことは続けること、すなわち『習慣』です」
「チリツモが大きな成果を得る近道です」
これまでの人生で、何度同じことを聞かされたでしょうか。話を聞いた時にはやる気に満ち溢れ、そして実際にやり始めたとしても、いつの間にかやらなくなっていた、そんな経験は、きっと誰でもあると思います。そして、それを繰り返し、参考になる話を聞いたとしても都合の良い論理を組み上げて、もはや「やらない自分」を肯定し始める…まさに2年ほど前の私もそうでした。
正直こういった生活系ハウツー本は、世にたくさん刊行されています。そのなかでも、この本を特出ししてオススメする理由は次の5つです。
【理由1:読みやすい】難解な言い回しが少なく、一文一文が短いため、読書が苦手という人にも読みやすいです。ただし全体的な文章量は多いので、読書を習慣化したい人が、文中の「2分間ルール」を実行し、習慣化を実現して完読を目指すのにもうってつけと言えます。
【理由2:納得できる】習慣が続かない理由は人それぞれです。この本には、その要因をあらゆる角度から検証し、要因ごとに習慣を続けるためのヒントを解説してくれているため、納得感があります。ちなみに「悪い習慣を断ち切る方法」についても解説されています。
【理由3:評価が高い】本の評価についての客観的な数字として、2023年9月5日時点でのAmazonでのレビューを提示します。日本語版では★4.5/ 5(1,129レビュー)、英語版では★4.7/ 5(143,384レビュー)となっています。
【理由4:英語学習にも最適】この本の原著は英語ですが、小説ではないので一文が短く、難解な英単語やハイレベルな言い回しもあまり出てきません。またAmazonでは英語版・日本語版それぞれに、電子書籍版(Kindle)と英語音声版(Audible)があり、音声を聴きながら原著を読むこともでき、英語学習に適した環境が揃っています。
【理由5:実際に効果が出た】最後のオススメの理由は、面倒くさがりの私自身が「必要なのはわかっているけれど、一番苦手で面倒だと思っていたことを習慣化できた」からです。
そのきわめてまっとうな社会正義の見地を確認しつつ、著者であるコレージュ・ド・フランスのシュピオ教授は、【今日台頭するグローバルな市場主義が、社会正義を二の次にして、資本・金融を拡大するための活動に邁進している状況】をつまびらかにしていきます。
私は、この本を何度も読んで(聴いて)習慣づけに成功し、今のところ約2年間続けることができています。第17章の「○○する人物」探しに困ったら、協力しますので高須研まで連絡くださいね(何のことか気になったらぜひこの本を読んでみてください。)
第188回 多様な人と共に生きることを考えてみたい人にオススメ
松江キャンパス 地域文化学科 三成 清香
私のオススメ
『食べることと出すこと』
頭木 弘樹著
医学書院 2020年8月発行
私たちは、毎日、当たり前のように食べて、排泄をしています。すなわち、何かを入れて、出しているわけです。そうした意味では「人間は、食べて出すだけの一本の管」と言えます。レポートの〆切に間に合わないとか、またアイツにあんなことを言われたとか、アルバイトをずる休みしたいとか、憧れの人とどうにかしてお近づきになりたいとか、就職活動がうまくいかないとか、いろいろな葛藤を抱えている“管”です。
さて、カフカ研究者としても知られる著者頭木弘樹さんは、大学生(つまり、ちょうど皆さんと同じくらい)のときに潰瘍性大腸炎という難病に襲われました。ある日突然、下痢をするようになり、血便が出始め、病院に行ったら即入院。絶食、しかし、出続ける粘液や血液、「食べることは危険である」という観念の構築……まさに、食べることと出すことに甚大な問題を抱える“管”としての生を生きざるを得なくなったわけです。
このとき、筆者が向き合わなければならなかったのは、食べることに付随する他者とのコミュニケーションでした。私がこの本の中で最も印象に残っているのは、筆者が山田太一の「車中のバナナ」(『絶望図書館』)の一場面を引用し、そこに強く共感しているところです。電車で同席することになった老人が、バナナを差し出す。しかし山田太一は受け取らない。老人は他の乗客に渡す。他の乗客は受け取る。しかし山田太一は受け取らない。気まずい雰囲気が漂う。結局、老人は「いただきなさいよ。旅は道連れというじゃないの。せっかくなごやかに話していたのに、あんたいけないよ」と非難する……という場面です。
私たちは、共に食べたり飲んだりすることで、仲を深めることがあります。つまり、相手に差し出されたものを(あるいは食卓にあがったものを一緒に)食べることは、相手の存在を受け入れるというサインであり、共に食べることの拒否は相手の拒否を意味します。そして、そうした行為は好ましくないものとして批判の対象になり得ます。たとえ、潰瘍性大腸炎でバナナが食べられない体だったからだとしても、です。
自分がどんな病気を抱えているかとか、どんな価値観をもって生きているかとか、言いたくないこともあるでしょう。言う必要はまったくないのです。しかし、それを明示しなければ善意の暴力に打ちのめされてしまうこともあります。この本を読むと、これまでいかに自分が多くの人に善意のバナナを投げつけてきたか(少し)知ることができ、ハッとさせられます。一本でも多くの管が読んでみるべき本としてオススメします。
第189回 人の「生き方」に興味がある人にオススメ
松江キャンパス 地域文化学科 岩本 晃典
私のオススメ
『驚きの介護民族学』
六車由実 著
医学書院 2012年3月発行
・トイレは小さなワンダーランド
これはp68にあるタイトルです。 「え!どういうこと!?」と思った皆さんは、ぜひこの本を開いてみてください。
介護の仕事について、皆さんはどんなイメージをお持ちでしょうか?現在の介護保険制度の下では、食事・排泄・入浴という三大介護に追われ、介護は大変という印象が強いと思います。かく言う私も皆さんと同じ大学生だったころ、そのように考えていました。
しかし、実際に働いてみると、それだけでは語れない人々の様々な「生き方」が見えてきます。
この本で筆者は、介護の仕事の生産性を向上するがゆえに、どうしてもこぼれ落ちてしまう、被介護者の“語り”に対して、民族学の知見を用いてとことん向き合い、描き出しています。おじいちゃん・おばあちゃん達の口から紡ぎ出される、眠っていた歴史や面白い出来事、悲しい記憶、ほっこりする話が色鮮やかに描かれており、読むとどこか懐かしく、そして温かい気持ちになる一冊です。
第190回 お探し物がある人にオススメ
松江キャンパス 図書館司書 野々村佳緒里
私のオススメ
『お探し物は図書室まで』
青山美智子 著
ポプラ社 2020年11月発行
ビブリオバトルは好きな本について自由に語れて、みんなが一生懸命聞いてくれるから最高だ!とあるバトラーが言っていました。
2021年の「本屋大賞」で2位に選ばれたから、読んだことある人がたくさんいるかも…などと考えてしまい、なかなかおすすめ本が決められなかった私ですが、このバトラーの言葉を聞いて、面白いと思った本を紹介すればいい!と考えこの本に決めました。
そして本書も、本を紹介する物語なのですが、ビブリオバトルや「私のおすすめ本」とは違い、図書室のレファレンスサービスとして、利用者が求めている本やコトに関する資料を紹介していきます。
しかし、この図書室には本とは別の“探し物”を求めている人が来館します。人生の悩みを抱えた人たちです。
そんな“探し物”をしている利用者に対して司書の小町さゆりは、ちょっと変わった選書をします。例えば、仕事に悩んでいる人に『ぐりとぐら』の絵本をといった感じです。利用者は不思議に感じながらも、紹介された本をきっかけに自分の“探し物”に向き合い始め、人生を見つめ直していきます。
私は、この作品を読んで、なにげないちょっとしたことが、大きなきっかけになることがあると改めて感じ、行ったことのない場所へ行ったり、してこなかったことをやってみたいと思いました。
お探し物がある人は、本書を読んでみてください。なにかのきっかけになるかもしれません。
※バックナンバーはこちらです