バックナンバー 第31回~第40回

第31回 『名作コピーに学ぶ読ませる文章の書き方』

名作コピーに学読ませる文章の書き方
  図書館司書 北井 由香

  私のオススメ
   『名作コピーに学読ませる文章の書き方』
   鈴木 康之 著
   日本経済新聞出版社 2008年
 
 私は、大学の卒業研究論文で「新聞広告のキャッチコピー」について研究した。短い言葉で人々を惹き付ける文章に興味を持ったからだ。
 広告コピーの文章は、ある程度自由で、こうでないといけないというルールがあまりない。それ故に広告コピーだからこそ成り立つ文章がたくさんある。例えば、『紙クズは もう一泊します』というコピー。これは、帝国ホテルの広告コピーであるが、普通に考えると紙クズがホテルで泊まるという表現は、おかしい。
 しかし、その文章の横に書かれている説明文を読むと、「帝国ホテルに泊まった客が間違って大切なメモを捨ててしまうなどの事態に備えて、すぐに焼却せず1日保管して置く」という意味で書かれたものだと分かる。すると、おかしく感じていた文章がそうではなくなる。なるほどとさえ思えてくる。
 そして、マイナスな表現も広告コピーにかかれば、そうではなくなる。『日本一 めんどくさい さくらもち』その後に書かれた、「作るのにものすごく手間のかかった、丁寧に作られたさくらもち」という説明文がこのコピーを際立たせる。マイナスな表現でありながら、マイナスの意味ではないのがおもしろい。
 まずは、「あれ?」と思わせることこそ広告コピーの狙いである。広告コピーは、読もうとして読まれるのではなく、何気なく見た言葉が目に留まり、読まれるものだ。
 さて、この本の中身だが、タイトル通り、「読ませる文章の書き方」が書いてある。この著者は、生徒に課題提出をさせる時、「書いたものを提出するな。何度も何度も書き直したものを提出しなさい、文章を書くということは、書き直すことなのだから」と言うそうだ。そして、「天才でなくても書き直しならできる、文章をちょっとだけ、しつこく書き直し続ければいい。書き直していくと喜びが生まれる。少しずつ変なところ、下手なところがなくなっていってどんどん良くなる。どこまで良くなるのだろう、と思う域に達したらしめたもの」とも。
 これは、コピーを作るとういうことに限らず、どんな文章を書く時にも言えることではないかと思う。こう書くべきとか、こういう構成でとかそんな堅苦しいことは書いていない。著者が普段、学生にどのような課題を出しているかなどが例に出され、分かりやすく文章の書き方が書いてある。この本を読むまでコピーは、一種のテクニックだと思っていたが、その思いは覆された。ここまでして作られたものだから、どんなに短い言葉でも多くの人を惹きつけるのだと。
 文章は、書くものではなく、読んでもらうものだという意味もこの本を読むとよく分かる。いい文章が書きたくなる1冊である。

第32回 『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』

ベンジャミン・バトン 数奇な人生
  図書館司書 田中 初美

  私のオススメ
   『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』
   F・スコット・フィツジェラルド著 永山篤一訳
   角川書店発行 角川グループパブリッシング発売 2009年
 
 昨年末に図書館カウンターにて1冊の本が返却された。今回紹介する本『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』である。私はブラット・ピット主演で映画化されたDVDを鑑賞し、感動した直後だったため、返却した学生に感想を聞いてみた。
 映画について熱く語る私とは反対に、学生によると、原作は少々怖くて読みにくかったとのことであった。ぜひ、読んでみてくださいと言われたので、読んでみることにした。
 本を読んでみると、映画と違う点はあった。映画では、出生時はしわくちゃな赤子として表現されていたが、原作は老人そのものだった。そのため、父親は服を用意するのに苦労した。また、ミルクを飲ませたり、ガラガラで遊ぶように言ったり、正常な普通の子どもだと信じ込もうとしていた。それとは反対に、ベンジャミンは葉巻を吸ったり、祖父と話をすることの方が落ち着くのだった。
 あるとき、鏡に写った自分の顔が若返っているのに気付く。この点から、ベンジャミンがどのような人生を歩むのか、想像できるだろう。自分が若返る反面、周りは歳をとっていく。今までできていた事ができなくなる。
 ベンジャミンの無念さを考えると、読み進めるのを苦しく感じるかもしれない。それでも、人生の経過と人間模様が見所だと感じた。人生とは多岐に渡るものであり、成長が逆行していく点以外は、誰にでも起こりうる事象が描かれているからだ。
 訳者である永山篤一氏によると、「日本におけるフィツジェラルドの人気や知名度は、村上春樹氏などが若い世代の読者へのアプローチに尽力されているものの、むかしにくらべればかなり低くなっているようだ。」と言っている。私も映画を見なければ、原作を読むことはなかったのかもしれない。映画化をきっかけにして、著者の作品にふれる機会が増えるなら喜ばしいことだろう。上記作品以外にも6作品を含む短編があり、手軽に読めるのではないかと感じた。

第33回 『安野光雅の世界』

安野光雅の世界
  図書館司書 北井 由香

  私のオススメ
   『安野光雅の世界』
   
高橋 洋二編 
   平凡社発行 2001年
 
 私の家の本棚には、たくさんの絵本が並んでいる。絵本が好きで集めていたら、けっこうな数になってしまった。
私が絵本好きになるきっかけとなったのが安野の絵本だった。その1冊が何だったのかは、今となっては覚えていないが、淡い色調の水彩画で細部まで描かれた絵と、遊び心のある言葉や構成に心惹かれたのを覚えている。
 今回、お薦めする本は、「安野光雅の世界」というタイトルの本であるが、私は、正にそのタイトル通り、空想から生み出される安野の世界が好きだ。
 安野が描いた絵本に「旅の絵本II」という本があるが、その中には、古いヨーロッパの町が描かれ、人々がこの町で生活をしている。この本には文字や言葉がない。しかし、絵を見るだけでこの本の中の人達が何をしているのか、何を話しているのか、どのように日々を暮らしているのかさえも伝わって来る。
 この本について、安野が何人ものヨーロッパ人に「日本人の君がどうして古いヨーロッパのことがわかるのか」と聞かれるそうだ。その時に「言葉や文字や生活習慣など違うことばかりだか、物理的な自然の法則も同じだし、植物や動物が生きるという原理にも少しも違いはない、私には、ヨーロッパの言葉は分からないが、人の心は分かる」と答えているそうだ。
 また別の本では、こんなことも言っている「イマジネーションの世界でも自然の秩序に従っていないと、存在感の乏しいものになり、説得力をもつことができない」「見なくてもかけるのは、その仕組みを理解しているからである」「...むしろ見ていないものを描くことに絵の意味があるのではないか...」
 これらの言葉を聞くと、「旅の絵本」のように実際に見たことのないものでも違和感なく描くことができる理由が分かる。それは、基本的な原理に基づいているからなのだと。
 例えば、月は、どのように欠けていくのか、花はどう揺れるのか、花嫁のお母さんは、他の人に比べてどのように泣くのか、そんな基本的なことを常に意識して安野は、絵を描いているのだ。そして、そこから安野独特の「空想の世界」が生み出される。
 私は、この空想の世界をワクワクしながら見る。そして、抜け出せなくなっている。

第34回 『絵本が語りかけるもの』

絵本が語りかけるもの
  図書館司書 飯島 久美子

  私のオススメ
   『絵本が語りかけるもの ピーターラビットは時空を超えて』
   三神 和子・川端 康雄 編 
   松柏社発行 2004年
 
 ピーターラビットといえば、日本でも長く親しまれ、兎という野菜を好む特性を活かしてドレッシングのCMにも起用されたほど。その写実的且つ愛らしい姿は、子どもだけでなく大人も魅了します。
 「絵本が語りかけるもの ピーターラビットは時空を超えて」では、ピーターラビットとその物語に込められた子どもへのまなざしや当時の時代背景などが記されています。 
また、作者であるビアトリクス・ポターがキノコ類の研究をしていたことを、皆さんはご存知でしたでしょうか?あの写実的な絵画が生まれた背景にはポターの博物学的探究心や彼女の農業生活のほかにも、草花や貝殻などに興味を示し、それらを生活の中に取り入れて楽しむ当時のイギリス社会が色濃く反映されているといえるでしょう。
本書ではピーターラビットの魅力を伝えるとともに、学術交流研究会「ピーターラビットは時空を超えて」を主催した日本女子大学の稀覯書コレクションの中からポター以前の絵本を紹介するなど、学術的にも興味深い内容となっています。
 島根県立美術館では3月5日から「ビアトリクス・ポター展」が開催され、ピーターラビットの原画なども展示されます。 
後年はイギリス湖水地方の自然保護活動にも尽力したビアトリクス・ポター。小さな動植物に向けられたやさしいまなざしを、ぜひみなさんも見て、感じてください。

第35回 『読書の必要性を信じて』

本を読まなくても生きていけますか?
  図書館司書 多久和 佑果

  私のオススメ
   『本を読まなくても生きていけますか?』
   久利生 たか子 著 
   グラフ社発行 2004年
 
 近年、子どもの「読書離れ」が深刻な問題となっており、松江市内にある多くの小中学校でも朝読書をはじめとする読書活動の取り組みが盛んに行われている。
 しかし、子どもたちの中には、もしかすると本にあまり馴染みがなく、読書を強制されていることに対し苦痛を感じる子もいるかもしれない。
 本書の著者は、子どもに読書意欲が湧きにくい理由の一つとして、子どもたちが大人の読書をしている姿を目にする機会が少ない、ということを述べている。子どもたちに読書意欲を湧かせるためにまずは、大人が本と向き合う姿を見せ、子どもたちに読書の見本を見せる必要があるのではないだろうか。
 「読書力は誰でも持っているもの。それを発揮しないでいるのは怠けているのと同じであり、本を読めないでいるのは、精神的弱さの象徴である」と本書の著者は述べている。確かに読書は、精神力、時間、労力を費やす行為だ。
 私自身も「時間がない」という理由から読書をしない時期があった。だが、それは精神的な甘えだったのかもしれない。ほんの少しの時間でも、その時間を有効的に使い読書をすることはできるはずなのだ。「読書なんか無駄だ、何の役にも立たない」と考えている人もきっと沢山いるだろう。確かに、読書をするだけでは何の解決策にもならない。
 しかし、読書を通し、自身が抱えている問題を解決する糸口を見つけることはできるかもしれない。読書をすることで、得ること、学ぶことは沢山ある。思考力、想像力、理解力、生きる知恵など...。それは、これから先、私たちの生きる力となっていくのではないだろうか。
 本書から、読書は生きる上で必要な情報を整理する力、そのために必要な精神力を培うものだということを学んだ。これから先、私も読書の必要性を信じ、本としっかりと向き合っていきたい。

第36回 『象はポケットに入れるな!』

象はポケットに入れるな!
  図書館司書 馬庭 佳緒里

  私のオススメ
   『象はポケットに入れるな!』
   ジョーンズ・ジョフリン&トッド・ミュージグ 著 
   株式会社マガジンハウス発行 2007年
 
 この物語は、象でジャグリングをしようとしたり、象をポケットに入れようとしたりしている人に読んでもらいたい作品です。
主人公のマークは仕事が忙しく、妻のリサや娘のジャッキーとコミュニケーションの取れない日々を送っていました。ある日マークは家族との時間を作るために渋々でかけたサーカスで、リングマスター(サーカスの団長)のヴィクターに出会います。ヴィクターは仕事のことばかり考えているマークに、「象でジャグリングをしようとしているみたいだ」と言葉をかけ、時間を有効的に使うアドバイスをくれます。
ヴィクターが言った「象でジャグリングをする」とは仕事で忙しいマークの状況を例えていて、一頭の象(仕事)を持ち上げようとしている間に、他の二頭(家族との時間や趣味の時間)を地面に落としてしまっているようだということで、つまり忙しさのために何も上手くいっていないねと言っています。
私はこの物語の、人生をサーカスに例えていることに新鮮さを感じ面白いと思いました。ヴィクターがくれるアドバイスは、計画の必要性や、確認をすること、休息を取ることなどよく言われるものですが、それがサーカスに例えられると、計画はサーカスのプログラムになり、休息はみんなを笑わせてくれるピエロになります。忙しくストレスの溜まるような状況があえてサーカスという娯楽に例えられていることで、楽しく時間のやりくりが考えられるように思えました。
本書に出会い、これから目が回るように忙しい時、ヴィクターが言っていた様々なアドバイスを実行してみることはもちろんですが、「象でジャグリングをしている」と自分自身気が付くだけでも、意味のあることではないかなと思っています。

第37回 『あなたのルーツが分かる日本人と家紋』

あなたのルーツが分かる日本人と家紋
  図書館司書 北井 由香

  私のオススメ
   『あなたのルーツが分かる日本人と家紋』
   楠戸 義昭 著 
   明治書院 発行 2010年
 
 皆さん、自分の「家紋」を知っていますか?
私の祖父は、モノに日付を入れるのが大好きでした。
電化製品を購入すれば、その裏に購入した日付を。タンスを購入すれば、裏に購入した日付を。自転車にも傘にもペンで書けるモノであれば、何にでも書いていましたが、写真の1枚1枚にも撮った日付と場所を入れていたのには、さすがに驚きました。
 そんな祖父ですから家を新築、改築した際にも押入れの中の壁に外からは見えないようにその日付をペンで書いていました。
 その日付と一緒にいつも目に留まるのが、その横に書かれた「家紋 丸に七宝に花菱(しっぽうにはなびし)」という文字。何気なく見ていたのでそんなに気に留めることもなく最近まで来たのですが、最近になってこの本を見つけ「そう言えば家紋って何だろう」「どうして家紋というものができたのだろう」「それぞれ家紋が違うのはどうしてだろう」という疑問が湧き始め読んでみました。
 読み終わると、自分の周りの人達の家紋が知りたくなり当分「ねぇ、家紋何?」と言う質問を繰り返していました。すらっと答える人もいれば、家紋?何それ?という人もいて、反応は様々でした。
 家紋は、ただ何となく何も意味もなく生まれたものではなく、それぞれに意味があり、いずれも一族の幸福と子孫繁栄の気持ちが込められています。それを探っていくと、そこに日本人の心が家紋という形を通して見えてきます。
家紋は、ものすごく奥深いものだと感じました。
 みなさんの家紋は、何ですか?

第38回 『社会人として大切なことはみんなディズニーランドで教わった』

社会人として大切なことはみんなディズニーランドで教わった
  図書館司書 山岡 麻衣

  私のオススメ
   『社会人として大切なことはみんなディズニーランドで教わった』
   香取 貴信 著 
   こう書房 発行 2009年
 
 皆さんは、「働くこと」に対してどの様なイメージを持っていますか?
本書は、著者の失敗談や経験談を、著者の目線で日記の様に書かれており、小説やエッセイを読んでいるような気持ちで読み進められ、社会人としての基本的なマナーを確認することができます。
本書を読んだ時、私の中の「働くこと」に対する今までのイメージが変わった様な気がします。
私自身社会経験は浅いですが、実際に職場に出てみると、学校や本で見聞きした基本的な礼儀や、丁寧な口調だけでは足りない事が沢山出てきます。そこで仕事に対して苦手意識を持つのではなく、どうすれば自分も、周りの人も楽しく気持ちよく働くことが出来るのかという事を、本書は著者の失敗談に基づいて教えてくれます。
作中に出てくる著者の上司は、著者に社会人としての基本的なマナーを時に厳しく、時に優しく教えます。ただ「仕事ができなかったから」「遅刻をしてしまったから」叱っているのではなく、それによって周りがどう影響されるのか、慣れから来る甘えが職場やお客様にどう影響するのかを著者にきちんと意識させ、考えさせるために叱っているのです。
作中の上司の言葉には、読みながら私もハッとする場所が何ヶ所かありました。著者の失敗や経験は、私たちでも普段やってしまいがちなものが多いです。私自身、読み進めながら自分の普段の行動を改めて見直すことができました。
「挨拶は先手必勝」「一生懸命にやっている姿が価値を生む」等々、「働くこと」をポジティブに受け止めるための言葉も沢山出てきます。
これから社会へ出る人、アルバイトなどで社会を経験している人、本書を読んで、楽しく「働くこと」や「社会人としてのマナー」をもう一度確認してみませんか?

第39回 『季節と暮らす365日』

季節と暮らす365日
  図書館司書 馬庭 佳緒里

  私のオススメ
   『季節と暮らす365日』
   日本気象協会 編 
   アリス館 発行 2009年

 日本には春夏秋冬の4つの四季がありますが、私たちは普段どのくらい季節を意識して生活しているでしょうか。近年は、季節に関係なくいつでも様々な食材を手にすることが出来るために、四季を感じる機会が減っているように思います。また、今年の夏に気象庁が発表した平均気温によると、統計が開始された1898年以降最も暑い夏だったと言われ、私たちが持っている季節感と差を感じるような出来事が起こっています。
 このように、現代なかなか季節を感じながら生活することが出来ませんが、本書は四季に合った日本の伝統行事や風習、気象状況が1日に1テーマ説明されているために読みやすく、また日にちに沿って季節を感じることが出来ます。また、各季節を快適に過ごすための知恵や注意すべきことも書かれています。
 私が本書を読んで興味を持ったのは、「二十四節季(にじゅうしせっき)」です。二十四節季とは、1年を春夏秋冬の4つに分けたものをさらに6つに分けた季節を表す言葉です。有名なものとして立春や夏至、冬至などがあります。その他にも、春に陽気がよくなり雪や氷が溶けて水になり、雪が雨に変わる季節を「雨水(うすい)」と言ったり、秋が深まり野草に冷たい露がむすぶ頃を「寒露(かんろ)」と言ったりします。二十四節季から情景を思い浮かべるととても趣があり、季節を感じることが出来ます。
また、8月8日は二十四節季の「立秋」で、意味は秋の気配が感じられるというものですが、今年の8月はどうだったでしょうか。暦の上では秋でしたが、とても秋とは言えない気候だったことが思い出されました。
 これからの季節「読書の秋」と言われますが、これは気温と関係があり気温が15度を下回ると皮膚が冷たいと感じ、脳に刺激が与えられ働きが活発になるそうです。「読書の秋」はもう少し先になりますが、四季を意識して生活を送ってみてはどうでしょうか。

第40回 『楽しい昆虫料理』

楽しい昆虫料理
  図書館司書 北井 由香

  私のオススメ
   『楽しい昆虫料理』
   内山昭一 編著 
   ビジネス社 発行 2008年
 
 虫嫌いの私だが、恐いもの見たさで読んでみた。
この本は、その名の通り昆虫を料理したものの写真が掲載され、その調理方法、食材の確保、飼育方法、保存方法に至るまで丁寧に書かれている。しかもそのままの形状で調理されているものがほとんどである。
昆虫は、昔の日本では、重要な食料であり、日常的に食されて来たようであるが、現在では通常の食料が豊富に手に入ることもあり、昆虫を食材としてほとんど認識されていないことが調査で分かっているようだ。
 しかし、今日においても昆虫食の風習が世界各地に存在していることは、テレビ番組等で紹介されることもあり、広く知られていることだろう。むしろ昆虫が食料の重要な位置を占めている国もある。そう考えれば食べられないことはない、むしろ特別なことではないかもしれないとさえ思えてくる。がやはり写真を見ると、はっきり言って気持ち悪い。
少し調べていくと意外なことが分かり、驚いた。昆虫食がひそかなブームらしい。東京では、月に1回程度「昆虫料理試食会」なるものも開かれており、予約でいっぱいになることもあるそうだ。しかも近年、未来のタンパク質源として様々な研究機関に注目され始めているという。
 確かにこの先、未来に食糧難という問題が起こった場合、生きるために昆虫を食べざるを得ない日が来るかもしれない。そんなことを考えつつ、「昆虫食」に関する様々な文献を読み「昆虫食」について勉強をしてしまった。結果、少し詳しくなってしまった。
ちなみに食料候補となるのは、大量に入手ができ、繁殖力があり、栄養価がある程度高いものなのだそうだ。「ゴキブリ」なんかが適しているらしい。
昆虫料理が食べたくなる1冊、ではない。

【参考文献】
対談 吉田宗弘・山田幸子「昆虫食と食文化(1)、(2)」食生活研究,2000.vol.21mo.2.3
吉田宗弘・岸教介共著「日本における昆虫食の分布と栄養価」食生活研究,1999.vol.20no.3
古川真一著「『昆虫食の文化』-昆虫のカロリー-」 比治山大学短期大学部紀要第40号  P91-94 (2005)
中沢留美・畑井朝子共著「既往文献に見られる昆虫食について」函館短期大学32号 P13-20 (2006)