バックナンバー 第51回~第60回
第51回 学生アルバイトおすすめ本
図書館 学生アルバイト 野村 星歌
私のオススメ
『余命10年』
小坂 流加著
文芸社 2017年
「余命10年」と聞いてあなたは「まだ10年ある」と笑いますか?それとも「もう10年しかない」と焦りを感じますか?
私はこの本を、はじめは物語の詳細をあまり知らないままで読んで、最後まで読み終わった後に、改めてもう一度読み直してほしいと思っています。そのため、多くはここでは語らずに、あらすじだけ軽く説明する形で紹介したいと思います。
宝くじに当たるよりも発症の確率の低い病気にかかってしまった20代の茉莉。この病気にかかった人で、10年以上生きた人はいないという。何かを始めても、志半ばで諦めなくてはならない。恋をすることは諦め、生きることに執着しないようにする茉莉だったが、小学生の頃の同級生であった和人に惹かれていってしまう。
「どうか私に死にたくないと思わせないで。」
綺麗な文章で綴られていく切ないラブストーリーです。
第52回 学生アルバイトおすすめ本
図書館 学生アルバイト 若本 佳奈
私のオススメ
『カラフル』
森 絵都著
講談社 2011年
生前に罪を犯した「ぼく」は天使から生まれ変わるチャンスを与えられた。生まれ変わるには真という男の子の体に憑依し、生前の罪を思い出さなければならないらしい…。
とても読みやすいですが、内容は少々重めで考えさせられる本です。物語の中には個性豊かな登場人物がたくさん登場します。中でも私がおすすめしたいのが、主人公の友達、ひろかちゃんの言葉です。中学生の微妙な心の揺れが見事に表現されています。
私は、つらい時にどうしても視野が狭くなってしまいがちですが、そんな時にこの本を読むと「人生は一つじゃないよ」と言ってもらえるような気がして勇気がもらえます。
彼はいったいどんな罪を犯したのでしょうか。ぜひ一度読んでみてください。
第53回 学生アルバイトおすすめ本
図書館 学生アルバイト 中野 そよ香
私のオススメ
『あと少し、もう少し』(新潮文庫)
瀬尾 まいこ著
新潮社 2015年
市野中学陸上部のエースで部長の桝井は3年生になり、19年連続での駅伝の県大会出場を目指していた。しかし、陸上部に新しく顧問としてやってきたのは、美術教師で陸上初心者の上原先生だった。そのうえ小さな市野中学では、駅伝メンバーを集めるのでさえ苦労する。それでも桝井は寄せ集めのメンバーと一緒に、中学最後の駅伝大会に臨む…。
みんなから慕われる桝井、元いじめられっ子で自分に自信が持てない設楽、不良で口の悪い大田、頼まれたら断れないお調子者のジロー、プライドの高い吹奏楽部の渡部、駅伝メンバー唯一の2年生で桝井に憧れる俊介。6人の駅伝メンバーがそれぞれ悩みや葛藤を抱えながらも、仲間と駅伝を目指すことで少しずつ変化していきます。子どもと大人の間の微妙な時期である中学生。性格も抱えている問題もばらばらの6人が、自分や仲間と向き合う姿に胸を打たれ、思わず涙してしまいました。一見頼りなさげな上原先生の言動にも、ときにハッとさせられます。
あと少し、もう少し、頑張りたいあなたへ。
第54回 学生アルバイトおすすめ本
図書館 学生アルバイト 野津 成美
私のオススメ
『また、同じ夢を見ていた』
住野 よる著
双葉社 2016年
この本の主人公は、小学生の奈ノ花という女の子。ある日国語の授業で「幸せとは何か」という課題を出された奈ノ花は、幸せについて考えます。学校の外で出会った三人の女性は、奈ノ花に様々なアドバイスをくれました。なぜか奈ノ花の名前を知っている彼女らとの出会いで、奈ノ花の人生が大きく変わっていくところが見どころです。
しかし、奈ノ花にアドバイスをした後に、三人の女性はなぜか次々と姿を消してしまいました。なぜ姿を消してしまったのか、彼女たちの正体を知るとまた違った読み方ができるのも魅力です。
将来や人生について考えてしまう時期の春にぴったりで読みやすいと思う一冊。何度も読み返したくなる温かいお話です。
第55回 学生アルバイトおすすめ本
図書館 学生アルバイト 野村 星歌
私のオススメ
『ルリユールおじさん』
いせ ひでこ著
講談社 2011年
私がこの本を知ったのは小学一年生の時でした。自分で読んだのではなく、NHKの「テレビ絵本」で知りました。そのためタイトルも著者も分からない上、何気なく見ただけなので内容も当時の私はよく覚えていませんでした。ただ、「絵の印象」と「面白かった」という感想と、「おじいさんと女の子の会話がある」という記憶のみでした。2011年に講談社出版文化賞絵本賞を受賞したことで話題になり、この絵本と再会する事が出来ました。
作業をしながらも自由で無邪気な女の子ソフィーの話をしっかりと聞いてくれているルリユールおじさんの温かさと、ルリユールにしか出来ないサプライズに心を打たれました。表紙の絵そのままの温かくて優しいお話です。
第56回 学生アルバイトおすすめ本
図書館 学生アルバイト 野津 成美
私のオススメ
『美しい日本の廃墟 : いま見たい日本の廃墟たち』
ヨウスケ, マツモトケイイチロウ, 腐肉狼 写真・著
エムディエヌコーポレーション 2016年
廃墟と聞いて皆さん何を思い浮かべるでしょうか。じめじめとしていて怖いといった暗いイメージを思い浮かべるかもしれません。しかし、この本に登場する廃墟は、どこか懐かしく涼しげです。植物のつたうレンガの壁や、コンクリートや鉄骨のむき出しになった建物は美しく、物語の中の世界のようです。日本全国の様々な廃墟が施設の種類ごとに、短い文章ときれいな写真で紹介されています。誰もいなくなった廃墟がひっそりと朽ちていく姿は美しく、写真を眺めているだけで遠い場所にタイムスリップしたような気持ちになります。
また、実際に廃墟に訪れる際に気を付けることや、廃墟へのアクセス方法も書かれています。
暑い日々が続くこれからの季節にぴったりな、どこか涼しげで美しい廃墟の旅へいざなう一冊です。
第57回 学生アルバイトおすすめ本
図書館 学生アルバイト 野村 星歌
私のオススメ
『どこいったん』
ジョン・クラッセン箸 長谷川義文 訳
クレヨンハウス 2011年
お気に入りの帽子を無くしたくまさんがお友達に心当たりがないか聞いて回ります。でもみんな知らないという…。
「ああかわいそうなぼくの帽子…」
なんとも言えない表情のイラストと長谷川さんのコミカルな関西弁で進んで行くこのおはなしは、最後また新たな謎を呼んで終わります。その答えは原文の中に…。簡単な英語で書かれているので真実は実際に読んで確認してみてください。「ぼくもどうやって訳そうか悩んだんです。」と話す長谷川さんの優しさも垣間見える1冊です。
私はなくし物の行方を「見たこともないし、触ったこともないで。ぼくに聞くのんやめてえな」
第58回 学生アルバイトおすすめ本
図書館 学生アルバイト 野津 成美
私のオススメ
『アウシュヴィッツのタトゥー係 』
ヘザー・モリス著 金原瑞人・笹山裕子訳
双葉社 2019年
第二次世界大戦下のアウシュヴィッツに強制収容されたラリの仕事は、収容されていく同胞の腕に収容所での“名前”となる番号を刻んでいくタトゥー係だ。奪われた日常の代わりに死への恐怖に支配されていく収容所。仕事ができない者、運が悪い者は容赦なく親衛隊員に撃たれていく。恐ろしさの中でも思考を辞めず生き抜こうとするラリは、ある日収容のため連れてこられた娘にタトゥーを施す。そして、娘の瞳に目を奪われ、恋に落ちる。
アウシュヴィッツから生還した、本作の主人公と著者との実際の対話がこの物語のもとになっている。フィクションではないと分かったうえでも、物語の中に出てくる非人道的なナチスの行為には目をそむけたくなる。この物語は実際に約70年前に起きた出来事なのだ。信じたくないような残酷な行為に対して、なぜ?どうして?と疑問が湧いてくる。同時に、他人を愛することや日常を不自由なく過ごせることがなんて素晴らしいことなのだろうと気づくことができる。アウシュヴィッツで出会い恋に落ちた二人は何度も危機を乗り越えていく。果たして二人の結末は…
「朝、目が覚めたなら、今日はいい日だ」「一人を救うことは、みんなを救うこと」
第59回 学生アルバイトおすすめ本
図書館 学生アルバイト 野村 星歌
私のオススメ
『蓮の奥出雲戦記 ヤマタノオロチ復活』
廣田衣世 作 照世 絵
岩崎書店 2009年
島根県出身の児童作家である廣田衣世さんの描く物語です。
ひょんなことから現代に黄泉返った八岐大蛇。主人公蓮は黄泉国から八岐大蛇を追ってきたアキヒコと共に八岐大蛇退治に乗り出す。八岐大蛇伝説にまつわる様々なこと、八岐大蛇とは何かを知りながら迫力満点の描写で進んで行くこの物語は何歳になっても楽しむことができます。蓮達が巡る物語の舞台はどこも実在する場所なので、実際に聖地巡りも可能です。
廣田衣世さんの物語は島根県が舞台なので地元の方はよりいっそうリアルに楽しむことができると思います。短編集もあるのでぜひそちらも楽しんでみてください!
第60回 学生アルバイトおすすめ本
図書館 学生アルバイト 野津 成美
私のオススメ
『出会い系サイトで70人と実際に会って
その人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと』
花田奈々子著
河出書房新社 2018年
タイトルだけ聞くと衝撃の一冊。タイトル通り出会い系アプリで出会った初対面の人たちにそれぞれピッタリの本をすすめていくという話です。初対面の人にどんな本が合うのか考えるために一人一人と向き合う。その過程で著者が自分を見つめなおす様子が心に響きます。著者のコミュニケーション力と読書量に圧倒されつつ、人と関わることや働くことについて考えさせられる一冊です。気軽に人と会えない今だからこそこの本を通して自分を見つめなおしてみるのもいいかもしれません。著者おすすめの本の中からステイホームのお供になる一冊も見つかるかも。