私のオススメ本
第223回 大きな事件が好きな人にオススメ

松江キャンパス 図書館職員 北井 由香
『ファイヤードーム 上・下』
辻村深月著
小学館 2026年6月発行
「人はなぜ大きな事件に魅了されてしまうのか」
物語の軸になるのは、1994年の薪戸市で起きた2つの事件。1つ目の事件は、「一郷屋百貨店受付嬢誘拐殺人事件」この事件は、全国ニュースで取り上げられるほど大きな事件でした。そして、もう1つは、「小学生轢き逃げ事件」。たまたま同じ時期に起こり、どちらの事件も表向きには、解決したような形になっていました。しかし、実は、この2つの事件には、隠された裏があったのです。
これらの事件から25年が経過した2019年にふたたび薪戸市に事件が起こります。小学4年生の男の子が写生遠足の帰り道に忽然と姿を消してしまうのです。全く関係のなさそうなこの3つの事件は、複雑に絡み合いながら、事件は思わぬ展開、真相へと突き進んでいきます。
この物語から見えることは、噂の怖さです。私たちは、なぜ大きな事件に魅了されてしまうのか?世間を揺るがすほどの大きな事件の裏には、必ず人々の興味を引くドラマがあるからです。それが真実であろうとなかろうと、面白おかしくセンセーショナルに語られる度に私たちは、その事件に引き込まれていくのです。私たちも物語を作り上げている一員になっているのです。
辻村深月が7年の歳月をかけて挑んだこの作品、長編小説ですが、ぐっと引き込まれ、あっという間に終焉に向かいます。これらの事件がどのように解決され、どのような結末を迎えるのか、是非最後まで見届けて欲しい1冊です。
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