私のオススメ本

第211回 「真実」を追求してしまう人にオススメ

おススメ本
  松江キャンパス 図書館司書 北井由香
  私のオススメ
  『怪物』
  
坂元裕二脚本 是枝裕和監督
   宝島社  2023年5月発行
   
「怪物、だーれだ?」
 ある日、郊外の学校で起きた、子ども同士の小さなトラブル。だったはずが…。 この物語は、母親、教師、そして子どもたち、それぞれの視点から語られることで、まったく違う「真実」を徐々に浮かび上がらせていきます。登場人物たちは皆、誰かを守ろうとし、正しいことをしようとします。けれど、その「正しさ」が、誰かを深く傷つけてしまうこともあり、「正しい」と信じているその裏には、加害者が潜んでいることもあるのです。
 読むたびに、登場人物の見え方が変わり、あなた自身の中にも「怪物」がいるのではないかと問いかけてきます。坂元裕二は、「自分が被害者だと思うことには敏感だが、加害者であることには気づきにくい」という人間の心理を脚本に込めたと語っています。
 私には、この物語は、胸が締め付けられるほど、切なくてとても苦しかったです。最後はハッピーエンドであってほしいと願っています。


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