実践的北東アジア研究者の養成プログラム - 8

実践的北東アジア研究者の養成プログラム - 8


市民とつくる“北東アジア研究交流懇談の集い”の議事録
市民とつくる“北東アジア研究交流懇談の集い”
日時:2006年10月7日(土) 13:30〜18:30
場所:交流センター・コンベンションホール

1.宇野学長あいさつ・講話

宇野重昭:
 島根県立大学は、「魅力ある大学院教育イニシアティブ」に採択された。公立大学文科系では、採択されたのが島根県立大学ただ一校であり、全国的に注目されている。こうした中で市民研究員制度をスタート、定着させることは、新しい試みであり、国だけでなく、研究者仲間からも注目されている。
 市民の方を主人公に考えたとき、本学が北東アジア研究を打ち出したところ、山陰の方を中心に関心が高かった。その知的レベル、造詣の深さに印象付けられる。大学の方から発信することばかり考えていたが、市民の方に教えていただくことを考えたい。
大学院生の側からの問題としては、まず北東アジアの実態に即した研究が必要で、きめの細かい地域研究、フィールドワークをする。次に、少人数の大学院で、討論のチャンスが少ないため、日本語が不充分な留学生であっても、辛抱強く聞いてくれる人と対話したい。さらに、実践的な北東アジア研究者を養成していく。
 本学は、このような形で、大学院の教育、研究の連携を図っていく。21世紀における高等教育というのはもはや大学だけではない。もっと幅広く求めて行かなければ、日本は世界の競争に負けるだろう。いつでも、だれでも、自分の望む期間に、研究・教育を行えること、大学はその高等教育全般の広がりの中の中核として、独自のあり方をしていく。その意味で、この試みは、21世紀の高等教育のさきがけという可能性を秘めている。
 市民研究員制度は日本で初めてのものであり、はじめから堅苦しいことを言い過ぎないようにしたい。気楽に、難しい議論から感想まで、遠慮なく出し合って下さい。

2.関係者紹介

福原裕二:
 関係者の自己紹介を、一人一分でお願いする。

別枝行夫:
 わたしは戦後日本の外交の歴史、日本の中国との関係を研究している。

増田祐司:
 情報社会、情報経済、中国のあり方、北東アジア研究では、情報化の問題について。

今岡日出紀:
 開発経済学、国際経済学。NIKSの工業化についてなど。

貴志俊彦:
 北東アジア地域研究。歴史部門。地域情報学。

井上治:
 モンゴルの歴史。

福原裕二:
 朝鮮半島をめぐる国際関係。韓国・北朝鮮について一緒に勉強できれば。

前原部長:
 裏方を支える事務局として、今後ともよろしくお願いしたい。

3.NEARセンターの概要・市民研究員制度の概要

貴志:
 NEARセンターは今後、大学院生の教育活動、地域との連携にも邁進する。人間の英知というのは大学に収斂されるものではない。市民研究員制度というのは、大学の知的NPOだと考えている。この制度はどこにもないもので、話合いをしながら制度を作っていきたい。積極的にご意見をいただきながら、半年の試行期間を経て、来年4月から正式にはじめる。応募資格はなし。北東アジアの地域研究、それに絡むこと、さらにお住まいの地域の様々な問題など。特典としては、大学へどんどん入って来て頂こうということ。大学からも情報公開していく。お金はでないが、お金の出せるプロジェクトへの通過点としての市民研究員制度がある。申込書提出は、可能であれば今日中に出してください。センターは堅苦しいところではないので、見ていただきたい。

4.大学院教育イニシアティブ

井上(治):
 本教育プログラムの特徴は、まず定期研究会へ院生を積極的に参加させること。研究の質を高める技術の習得として、中山間地域研究センター、GIS、フィールドワークの活用。島根の先進性を利用する。さらに、北東アジア学創成研究として、競争的課題研究を用意し、RA(準研究員)への道をつくる。次に、市民研究員との共同研究を行う。これを通じて得難い知的刺激が受けられと思われる。さらに、教育者としての訓練の機会として、TAの採用を行う。
 市民研究員との共同研究グループの組織を考えている。まず第一回の定例研究会で、話し合う機会を持ちたい。また情報交換サロンなどを利用して、メンバーで研究計画を作成し、11月27日までに提出してもらい、現地調査・資料収集の期間として12月から来年2月を予定している。
 プログラムからのお願いは、サロンと定例研究会への出席、さらに院生にたいする助言と指導を是非お願いする。最後は、最終報告会で活動報告をしていただく。

5.質疑応答

市民:
 先ほどの説明では、サロンが毎週金曜日に設定されているが、仕事をもつ一市民としては、出席は不可能だ。わたし自身は土曜の午後くらいが出やすい。曜日を替えてローテーションなどを考えてはどうか。

貴志俊彦:
 大変重要な問題である。午後5時、6時以降の開催も含めて検討したい。

市民:
 アクセスの方法も考えてほしい。いくつものルートを考えるとか。

貴志俊彦:
 テーマなどに従ってグルーピングができれば、お話いただいたような色々な方法を考えたい。

市民:
 研究テーマに関して、院生のテーマが書いてあるが、これ以外の分野については共同研究の可能性はないのか。

井上治:
 院生がすでにテーマを確定して研究を始めているときは難しいが、しかし少しでも接点があれば、それは排除するものではない。お互いの情報交換を通じて考えたい。

貴志俊彦:
 補足として、共同研究に発展した場合というのは、第2段階とお考えいただきたい。市民研究員としての研究がまず第1ステップであり、共同研究は第2ステップとなる。自分の研究は自由にしていただいて構わない。

市民:
 中国、韓国、モンゴルなどは、日本から見れば「北東」アジアにあたらない。どこを中心にして「北東」と呼ぶのか。

貴志俊彦:
 北東アジアとはどこなのかということは、大変本質的な問題である。今の地理的、歴史的、文化的区分から見れば、従来からのイギリスから見た概念にならざるを得ない。ただし本学で考える「北東アジア」というものに、中心をおくことはない。地域間の連携を考えることが大事である。

院生:
 共同研究ができる場合、助言をいただくという意味について。わたしが社会人院生だからではないが、市民研究員の方からだけ一方的に協力していただくというのではなく、学生のほうからも、何か、お互いに刺激を与え合いながらというふうには言えないか。

井上治:
 今ここで、それを議論する必要はないと考える。ここで院生に配慮する必要はない。言われたアドバイスに対しては、院生がそれぞれで取捨選択するべきものだ。

市民:
 院生も、わたしらがどういうものを専門にしているか分かりにくいだろう。このメンバーの得意分野、不得意分野についてある程度管理して、情報を与えたほうがいいのではないか。

井上治:
 登録用紙にデータをお書きいただければ、それを集約し共有していく。また自己紹介の時間を設けてある。

貴志俊彦:
 今の段階は、まだ登録前なので。第一回目の研究会では、データを出して、話し合う時間を持ちたい。

宇野重昭:
 この後にまだチャンスはあるので、ご質問、ご意見を出してください。討論が形をつくると考えている。
 北東アジアとはなんぞやということについて一言。歴史的にいうならば、国を中心にある特定の地域を北東アジアとして捉える。歴史的過程で、日本が抜けているのはおかしい。ここでは日本を抜いての北東アジアというものは考えていない。この20年ほどのあいだ、国単位で捉えるのはおかしい、固定した一定の地域として捉えるのはおかしいという議論が出ている。地域−地域の関係の問題、周辺地域の問題もある。北東アジアというのは、北アジア、東アジアの接点となっている。
 研究の世界においても、この問題には論戦が続いている。議論が行われていることは結構なことだ。「北東アジア」という用語は朝鮮半島と日本で熱心に使われているが、それぞれの方が、北東アジアのイメージを作っていくのが大切だ。

〈休憩〉

6.参加者自己紹介・意見交換

福原裕二:
 時間が来たので再開したい。市民の方々、院生の皆さんの自己紹介をお願いする。交流会の際に、自らの関心領域に近い方々と交流して欲しい。なお、出席者名簿、席次表を参考にしていただきたい。

貴志俊彦:
 自己紹介は、○○さんからお願いしたい。

市民:
 この市民研究員制度は私にとり待望のものだ。その理由は以下である。大学が出来て7年目、私はこの浜田地域の人材育成に対して常々考えてきた。大学と地域、市を挙げて人材育成をしたいと相談してきた。そのような矢先に市民研究員制度の話を耳にした。それゆえ応募した。
なお私自身、専門領域はない。「朝鮮の民主化」、「朝鮮有事の際に、武装難民が浜田に来たらどうするか」、「北朝鮮の軟着陸の可能性と現実性」等に関心がある。また、浜田市が中国寧夏で緑化事業を行っている関係上、その事業にも関心がある。

市民:
 現職を離れて、毎日、好きなことをしている。現役から離れた今、学生時代に好きで学んできた事を現在行っている。学生時代は人口論を専攻していた。当時は人口抑制に関心があったが、今は人口減少の時代に関心が傾いている。なお、社会心理学を三年ほど勉強してきた。その際、樺トシオ教授の指導を受けた。そして社会調査に関心がある。最近は「人口と文明の相互関係」について一日数時間、読書をしながら過ごしている。私自身、30代に青年会議所で働き、40、50代でロータリー活動に従事し、そこで会長職も勤めてきた。市会議員も一期努めた。こうした経験から、学生の相談相手になれるのではないかと思っている。

市民:
 このような場所にいるのは似合わないと思っている。6年半前、平成12年4月に浜田へ戻ってきた。それまでは大阪でサラリーマンをやっていた。両親の老後を見るために帰ってきた。たまたま貴学のNEARカレッジに参加した。その関係で私に案内状が来たのだろう。なお、私は「印刷の歴史」、「和紙の歴史」に関心がある。ただ同テーマで指導できるほどではない。ただ、年の功で何か学生に言えるだろう。

市民:
 貴学のすぐ下に住んでいる。「朝鮮の漂着民」、「天保年間における竹島問題」に関心がある。この制度に参加した目的は「自分がとらわれている概念から自由になること」、そして「自分の考えを広げる」ためである。個人でやっている研究だが、他の領域の人々の意見も知りたい。自らが有している偏りをなくしたい。院生のお手伝いもあるが、私自身、一番の参加理由は上記の理由である。

市民:
 はたして当大学まで通えるのか疑問。それゆえ、今日は申し込みが出来るかわからない。ところで、「人魚のふるさと」、「日本海ルネッサンス」について触れたい。「何これ?」と思う方もいると思う。それは私の本を読んでいない人だろう。
浜田は私の第一のふるさとである。私は旧制浜田中学の最後の入学生である。25年前に私的な博物館を造った。美術館は三万冊の本を有しており、日本海も目の前にある。若者との繋がりを重視したい。私自身、北東アジアは12回も訪れている。なんとかそういう人達と関係を持ちたいと考える。

市民:
 田川セイジロウが京城で事業を行っていたのだが、自分の父はそこで働いていた。私は、韓国に思いをはせる毎日を送っている。韓国をもっと知りたいというのが私の希望である。

市民:
 金城に住んでいる。タタラ遺跡が88箇所ある。島根にはシルクロードならぬ「鉄の道」が大陸からあったのではないか、と考えている。その際、中国、モンゴルに居住しているタタール人が鉄を伝えたのではと仮説立てている。ちなみにハサミの元となる物がウズベキスタンにある。これはお願いだが、学生達に「道が繋がっていること」を研究して欲しい。なお私は、「北東アジアの概念」がまだ理解できていないことを申し述べておく。

市民:
 唐鐘は唐から辿り着いた人々と聞いていた。しかし、以前貴学におられた朴先生は「それは唐ではなく韓国だ」と指導してくれた。ところで、私は、平成10年に浜田へ戻ってきた。その際には短大があったわけだが、時間があったので、別枝先生の講義(日中関係史)を聴講した。なお現役のとき、運輸業に携わってきた。それゆえ、各国の運輸に関心がある。特に、排気ガスの公害問題に関心がある。老人福祉にも関心がある。

市民:
 私は行政に身を置いている。生産コストの関係で地元(島根)の空洞化が起きている。所得格差も拡大している。これを解決するため、いかなる点に着目すれば良いのか学びたい。ただ、今は漁業問題にも関心を持っている。

市民:
 日韓暫定水域の日本側民間代表として漁業問題に関与している。竹島の日制定前後から取材を受けている。さて、竹島領有権、基点の問題、暫定水域、三点ともに別の問題であることを皆、認識していない。暫定水域はもともと漁業問題である。海洋法からみるとEEZ水域。しかし、暫定水域問題は韓国の国内事情に配慮した産物である。漁業問題こそ、日韓関係の縮図と考える。私は同問題を日本の漁業者の立場から議論したい。李承晩ライン、竹島問題、全て日本の漁業者が犠牲になっていると認識している。韓国人留学生が暫定水域についてどう考えているかを知りたい。

市民:
 市民グループに参加している。そこでは益田市の活性化を検討している。このような問題意識からこの制度に参加した。私は、特に「少子化」、「益田市の活性化」に関心がある。

市民:
 学生時代に政治学を学んだ。アジア共同体論に関心がある。また、私は過疎の問題に関心を有している。韓国、中国でも地域の過疎があるだろうと思うので、そのような観点からも議論したい。

市民:
 街づくりネットワークに参加している。健康というテーマで、身体と心の健康に関心がある。なお、健康との関わりから中国の思想にも関心を有している。

市民:
 ジェンダーと子育てに関心がある。高橋睦子先生に指導を受けた。なお娘は中国史に関心を持っている。

市民:
 県から紹介で、本日参加した。専門は建築である。日本がアジアの中でいかなる位置づけにあるのかに関心があるものの、2月までに議論をまとめるのは困難だと考える。今後、参加するか否か、考えたい。

貴志俊彦:
 「2月まで」との事だったが、誤解があるようだ。市民研究員の登録によってたちまち成果を出さなければならないという義務が発生するわけではない。あくまで、市民の方々の叡知を大学・センター及び大学院に取り込んでいくことが目的である。誤解のないようお願いしたい。

市民:
 7年間、NEARカレッジを聴講した。日本語のボランティア(主に中国人を相手にする)を行っている。卒論をお手伝いした留学生もいる(文章のネイティブチェック)。私には専門があるわけではない。ライフワークとして石見弁の研究をやっている。特に「トウガネ弁」は石見弁の孤島と言われており、興味深いと考えている。

市民:
 満蒙開拓団に携わった方は、この制度に参加してほしいとの記事を読んだ。私は、残留孤児の自立指導員を8年ほど行った経験がある。それゆえ、「満州とは何だったのか?」という疑問が生じ、教えていただきたく思った。なお私は日中友好協会会員でもある。広島の被爆問題にも関心があり、731部隊博物館館長にも広島へ来て頂いた。しかし、英語での意思疎通は困難であり、中国人に少しでも被爆のことを伝えたいと思っている。

市民:
 紙地図をデジタル化する研究をしている。GISと密接な関係がある。ここに来たいと思った一番の理由は、自分と異なる考えの人々と意見交換をしたいからである。

市民:
 学生時代にトルコ史を勉強していた。私はイスラムに対して関心を有している。また、松前藩の対外交渉史の勉強もしている。

市民:
 NEARカレッジは開講当初から受講している。私は中国に関心がある。現在、中国が抱える問題をリストアップして、昭和30年代以後の日本と対比している。

市民:
 大学の地域貢献に関心がある。その上で、大学の資源を職務で使えないかと思っている。

市民:
 私は紅茶の文化、歴史について勉強している。北東アジアとお茶は深い関係を有している。茶の生産地は中国であるわけだが、福建省から大航海時代に欧州に伝わった。

市民:
 今後、少子高齢化問題、環境保全問題が21世紀のテーマとなるだろう。これに関心を有している。なお、私は産業振興を市で30数年間、担当してきた経験がある。

市民:
 私は市民のアイディアを受けて、街づくりに貢献したいと思っている。

市民:
 大学では都市計画を専攻してきた。

市民:
 私は行財政推進を担当している。自分自身が学生に教えるのではなく、教えていただきたいと考えている。

市民::
 この制度を利用して、いろいろと知識を吸収したい。

市民:
 貴学の開発研究科で勉強していた。「大学と地域の連携」、「大学を地域の活性化にいかに生かすのか」に関心を抱いている。そのためにはいかなるシステムが必要なのか、を検討したい。

市民:
 私は、今まで国際関係とは無縁だった。今後勉強していきたい。

市民:
 私は県立大学の卒業生です。

市民:
 貴学が公立大学として初めて、文部科学省よりプロジェクトを採用されたことに誇りを感じている。

市民:
 私は光ファイバーの研究を行ってきた。それゆえ北東アジアを研究してきたわけでない。なお、私の両親は満州に行っていた。この点では北東アジアに興味がある。満州は王道楽土といわれていたのだが、最近、『満州のオーケストラ』という本を読んだ。

市民:
 島根の古代史に関心がある。

市民:
 能海寛(チベット探検家)に関心を有している。ところで、大学院生は既に研究テーマが決まっているため、市民研究員制度はその目的を達成することが困難ではないか。この制度を活用する事を考えた時、むしろ市民研究員と学部生との交流の方が効果的なのではと思う。事務局はこの点を検討して欲しい。

市民:
 広島大学で公開講座を担当している。高齢者対策の講義に関与してきた。私の関心領域は「渤海の交渉史」、「元寇に対する出雲の対応」、そして「北東アジアの経済開発」である。

福原裕二:
 予定の時間を超過したが、当日参加の方がいらっしゃるので、自己紹介をお願いしたい。

市民:
 研究テーマはありません。何かお手伝いができればと思っている。公共教育行政や地方交付税、少子化対策に携わったことがある。

市民:
 県立大学事務局にいた。研究テーマはありません。

福原裕二:
 有難うございました。意見交換の予定がありましたが、時間超過のため、これで終わりたいと思います。