『界隈』16号表紙解説(校正前の原稿)
表紙は、本学メディアセンター服部四郎ウラル・アルタイ文庫蔵の木版本モンゴル語訳ilaγuγsad-un erketü qamuγ-i ayiladuγči včir dhar_a blôbzang bsgal bzang rgy_a mcô dalai blam_a-yin gegen-ü namtar-i tobči-yin tedüi ügülegsen kalbaravara erdeni-yin itegelel neretü tuγuǰi(勝者らの力もつ一切智者ヴチル・ダラ・ロサン・ケーサン・ギャムツォ・ダライ・ラマ御前の伝記を簡潔に述べた如意宝珠の信念という物語=『七世ダライラマ伝』)上巻の冒頭数葉である。11.2×51.1cm。上巻364葉、下巻357葉、序5葉からなる。三世チャンキャ活仏ロルペードルジェが1758年から59年にチベット語で著し、ダイ・グーシ・ダルハン・シレート・ガワンテンペーが1766年から68年にモンゴル語に訳した。七世ダライラマ(1708-1757)の生涯のうち、主に如何にして仏法を修習したかが記されている。七世ダライラマはリタンの人で、1710年に前世の転生と認められ、1714年に出家、1720年にチベットに至り修習に励んだ。著者のロルペードルジェ(1717-1786)は甘粛の人で、1720年に前世の転生と認められ、1724年に清の雍正帝の命により北京に至って修習を続けた。1734年に勅命により四川に至って七世ダライラマに謁見したのち彼をラサに送り、1757年のダライラマ円寂に際しては勅命に従いその事後処理に当たるなど、二人の高僧の関係は深かった。版式の特徴から清代の北京で開版されたものであることは間違いない。服部は、戦前に北京に滞在し北京大学で講師を担当していたことがある。北京にあったモンゴル書肆でこれを買い求めたのだろう。